日銀が金融政策維持、円安修正で判断に「時間的な余裕」と植田総裁
消費判断を上方修正
会合後に公表した声明文では、景気は「一部に弱めの動きも見られるが、緩やかに回復している」とし、先行きも「潜在成長率を上回る成長を続ける」との認識を維持。個人消費は「緩やかな増加基調」とし、従来の「底堅く推移」から判断を引き上げた。消費者物価の基調的上昇率は、7月に示した2024-26年度の見通し期間後半に「物価安定の目標とおおむね整合的な水準で推移する」との見方も据え置いた。
リスク要因については、7月の経済・物価情勢の展望(展望リポート)に続き、金融・為替市場の動向や、その日本経済・物価への影響を十分注視する必要があると指摘。「過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面がある」と記した。
大和証券の末広徹チーフエコノミストは、「為替の影響度を注視しているのは重要なポイント」と指摘。来年にかけて円高が進めば物価の下振れリスクとなり、来年には利上げ停止もあり得るとの見方を示した。その上で、年内に一度、さらに来年の早い時期にもう一度利上げをし、「着地点は0.75%程度になるとイメージしている」と語った。
総裁は会見で、名目賃金動向について「春闘の結果は反映される形で所定内給与が伸び率を高めているほか、昨年の好業績を受けて、ボーナスもしっかりと増加している」と評価。来年の春闘でも賃上げが続くことが期待できるとする一方で、「今後、海外経済の動向などが企業収益や企業行動に影響を及ぼすことがないか丁寧に点検していきたい」と述べた。
総務省が20日発表した8月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は前年比2.8%上昇と、4カ月連続でプラス幅が拡大した。エネルギー価格の高止まりに加え、食料や家庭用耐久財の上昇が全体を押し上げた。生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIは2.0%上昇と、2カ月ぶりに2%台を回復した。
--取材協力:野原良明、氏兼敬子、横山恵利香、今田素直.
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Sumio Ito, Toru Fujioka, Takashi Umekawa