日銀が金融政策維持、円安修正で判断に「時間的な余裕」と植田総裁
(ブルームバーグ): 日本銀行は20日の金融政策決定会合で、政策金利の無担保コール翌日物金利を0.25%程度で維持することを全員一致で決めた。植田和男総裁は経済・物価見通しが実現すれば利上げを継続する考えを改めて表明する一方、政策判断には時間的な余裕があるとの見解を示した。
植田総裁は会合後の記者会見で、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」と語った。8月初めに大きく変動した金融市場は、引き続き不安定な状況との認識を示しつつ、市場変動後も日本経済は「われわれの見通し通りに足元動いてきている」と述べた。
その上で、足元の円高進行を背景に、年初以降の円安に伴う物価の上振れリスクは相応に減少しているとし、政策判断に当たっては「時間的な余裕はある」と指摘。米国経済を中心とする世界経済や金融・資本市場の動向が、経済・物価見通しに不透明感を与えているとし、「直ちに見通しの確度が高まった、すぐ利上げだということにはならない」と語った。
総裁の発言を受けて、市場では日銀が追加利上げを急がないとの見方が広がり、円相場は1ドル=143円台後半に下落。米シカゴ市場の日経平均先物は一時3万8300円台まで上昇し、大阪取引所の終値3万7530円を上回っている。
ブルームバーグが6-11日にエコノミスト53人を対象に実施した調査では、全員が今会合での金融政策の現状維持を見込んでいた。7月の利上げ決定後の市場の不安定化を受けても、植田総裁は日銀の経済・物価見通しに大きな変化はないとしたものの、米経済を中心とした先行きリスクの拡大を指摘した形だ。
第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは、総裁発言を受け「10月利上げの可能性はなくなった。上振れリスクが低下する中で急いで利上げをする必要がないことを明確にした」と指摘。米経済の不確実性の高さを強調し、判断に時間が必要と示唆しており、「最終的には日銀自身の裁量での判断になる」との見方を示した。自民党総裁選や総選挙の可能性も含め、日銀は見極めたいのではないかとみている。