選挙の面白さを伝える畠山理仁が見た泡沫候補の政策「江戸城再建、都民全員に3000万円配る」
格差・貧困問題に取り組み、メディアで積極的に発言をしている作家・雨宮処凛が、バンドやアイドルなどを愛でたり応援したりする“推し活”について深堀りするコラムシリーズ第8回。今回のテーマは、選挙と推し。選挙の面白さを伝えるフリーランスライター畠山理仁に話を聞いた。取材・文/雨宮処凛(前後編の前編) 【写真】畠山理仁私物のマイ投票箱、本人タスキ、自作の「選挙漫遊」ステッカー 「畠山理仁50歳。取材歴25年、平均睡眠時間2時間、選挙に取り憑かれた絶滅危惧種ライター」 この言葉は、23年11月に公開されたドキュメンタリー映画『NO選挙, NO LIFE』(監督・前田亜紀)のキャッチコピーである。 映画の主人公である畠山氏を、私は数年前から「選挙の風物詩」と勝手に名付けている。選挙と名のつくものが始まると、SNSなどで彼を見かけることが増えるからというのがその理由だ。そのたびに、「ああ、また選挙が始まったのだなぁ」という気分が込み上げる。 そんな畠山さんは選挙取材に対して自らに厳しすぎるルールを課している。 「記事にするには候補者全員に取材する」というものだ。国政選挙や都知事選ともなれば膨大な「泡沫候補」がいるわけで、その人たちにも一人一人話を聞くのである。時間もかかるしお金もかかる。そんなことを自らに課していること自体驚きだが、『NO選挙, NO LIFE』を見て驚かされるのは、泡沫候補の世界のカオスっぷりだ。 自らを「超能力者」と名乗る者がいれば、「トップガン政治」という謎のキーワードを掲げる者がいる。政党名もすごい。バレエの衣装を着た男性が掲げる「バレエ大好き党」、「炭を全国で作る党」などなど。スーパーマンの衣装に身をまとったおじさんなんかもいて、人間の「業の深さ」に圧倒される思いだ。 見ているだけで「こんな生き方もあるんだ」「ここまで自由でいいんだ」「ここまでハチャメャでいいんだ」と俄然、勇気がわいてくる。みんなタガが外れているけれど、その中でももっとも外れているのが畠山さんだ。なんたって選挙取材では赤字も多く、バイトまでしながら活動を続けているというではないか。しかも妻子あり。子どもは2人いるという。 何が彼をそこまで駆り立てるのか。 世の中には「選挙なんてつまらない」と思う人の方が多数派だろう。ということで、この道四半世紀の求道者が私財を投げ打ち、膨大な時間と労力をつぎ込んできた「推し」=選挙の魅力を聞いてみた。 畠山さんに話を聞いたのは8月はじめ。都知事選から一ヶ月の頃だったのだが、まだ余韻の中にいる畠山さんにまずはなぜ、「選挙」に興味を持ったのか聞いてみた。すると飛び出してきたのは、意外な人物名。 「きっかけは、大川興業の大川総裁です。98年から大川総裁が『週刊プレイボーイ』で政治の連載を始めたんですけど、その担当ライターになったんです」 そこから大川総裁とともに選挙取材に繰り出すようになり、その世界の潤沢さにハマっていく。 初期に注目したのは山口節生氏という、「インディーズ候補界のメジャーリーガー」。