物価上昇率は急速に低下(1月東京都区部CPI):日銀は2%の物価目標を柔軟化したうえで政策修正に着手することがおすすめ
東京コアCPIは1年8カ月ぶりに2%割れ
総務省が26日に発表した1月分東京都区部CPI上昇率は、予想外に下振れた。生鮮食品を除くコアCPIは、季節調整済前月比-0.1%と低下し、前年同月比上昇率は+1.6%と前月の+2.1%から大きく低下した。日本銀行が物価目標とする2%を下回るのは、実に1年8か月ぶりのことであり、歴史的な物価高騰は節目を迎えてきた。
1月全国CPIで、コアCPIの季節調整済前月比が東京都区部と同様にー0.1%となれば、前年同月比は+1.8%とやはり2%を割り込むことになる(図表)。 1月分東京都区部CPIでは、様々な要因が前年比上昇率の低下に寄与した。12月分と比べて1月分の前年比上昇率に与えた影響は、エネルギーがー0.10%でそのうち都市ガス代がー0.08%、電気代がー0.02%となった。さらに宿泊料がー0.24%、生鮮食品を除く食料がー0.07%、通話料(固定電話)がー0.05%となった。
コアコアCPIでも2%割れが視野に入る
前月比-5.1%となった宿泊料は、もともと振れが大きい項目であることから、1月の物価上昇率の下振れには一時的な要素もある。しかし、食料品価格の上昇率は一巡している。また、宿泊料を除いたサービス価格では、外食や通信費もCPIの前年比上昇率の押し下げに貢献しており、サービス価格の上昇率にも頭打ち感が広がっている。 CPIの前年比上昇率には、政府による電気・ガス補助金による押し下げ効果が0.45%含まれており、この点から、コアCPIの上昇率は物価上昇率のトレンドよりも下振れている。しかし、こうした政策効果を除く、より基調的なコアコアCPI、つまり食料(酒類を除く)及びエネルギーを除くCPIを見ても、1月分は前年同月比+2.2%と、12月の+2.7%を大きく下回り、2%割れが視野に入ってきた。
サービス価格の上昇がけん引する姿は見通せない
日本銀行は、原油高、円安といった輸入物価の一時的な上昇による物価上昇率の上振れを「第1の力」、それが賃金を押し上げ、サービス価格に転嫁されることで持続的な高めの物価上昇率につながる「第2の力」とし、「第1の力」が「第2の力」に橋渡しされていくことが、2%物価目標達成の条件と説明してきた。 しかし、過去を振り返っても、こうしたメカニズムで物価上昇率のトレンドが上方にシフトした例は明確には見られない(コラム「賃金からサービス価格への転嫁は限定的か:持続的な2%物価上昇の達成は依然難しい(12月分全国CPI)」、2024年1月19日)。 1月分東京都区部CPIで、サービス価格の前年比上昇率は既に2か月連続で低下している。この点から、「第1の力」から「第2の力」への橋渡しという日本銀行のシナリオは、絵空事のように思える。