性加害事件が続発中。在沖米兵の"南下"で沖縄住民に広がる不安とは?
米兵が引き起こした性犯罪を巡って沖縄が揺れている。 6月下旬、警察発表がされていなかった米軍による事案が相次ぎ発覚。しかも、そのうちのひとつが16歳未満の少女が犠牲となった事件だったことが判明し、市民の抗議活動が活発化するなど、島全体に怒りの声が渦巻いているのだ。 「事件があったのは、昨年12月24日。嘉手納基地に所属する空軍兵が本島中部の公園で声を掛けた少女を自宅に連れ去り、性的暴行に及んだというものです。犯行そのものも少女を狙うという悪質極まりないものですが、物議をかもしたのは政府の対応です。外務省が事件を把握していながら県に伝えておらず、報道で明らかになる6月25日になるまで実に6カ月もの間、事件をひた隠しにしたことが問題になったのです」(地元メディア関係者) 最初の事件報道からほどなく、地元紙の琉球新報が5月にも、米海兵隊員が県警に逮捕された別の性犯罪事件の存在をスクープ。こちらも政府側から県への情報共有がなかったため、相次ぐ米兵事件の〝隠蔽〟に県民の怒りが爆発した格好だ。 「ふたつ目の事件については、米兵が裁判員裁判の対象となる『不同意性交致傷罪』に問われていることも問題になりました。この種の事件は起訴の段階ですぐに報道各社に通知があるのですが、それも行われておらず、政府は事件の存在をひた隠しにしていた。事件が明るみに出る前の6月16日には県議選が行われていたこともあり、政府対応への疑念はより一層膨らむこととなりました」(同前) 林芳正官房長官、上川陽子外相ら政府幹部が公表を控えた理由を「被害者のプライバシー保護のため」と繰り返す政府対応にも批判が集中。野党側が一連の問題について国会が閉会中である点を踏まえた「閉会中審査」を求める構えを見せるなど、〝炎上〟が続いている。 ■警戒高まる在沖米兵の"南下" 一方、在日米軍施設・区域の約70%が集中する沖縄では、こうした凶悪事件を度々引き起こす米軍に対する不信感も拡大。さらには、最近の米兵たちの行動の変化も、県民の不安をさらに増幅させているという。 「地元で警戒感が高まっているのは、米兵たちの"南下"によるものです」 こう明かすのは、地元飲食店関係者だ。この地元関係者の懸念を説明するためには、沖縄の基地事情を踏まえる必要があるだろう。 沖縄には現在、31の米軍専用施設がある。米軍は2013年4月、嘉手納基地以南の人口密集地が所在する本島中南部の土地返還を進める「統合計画」を公表し、その計画に沿って県都の那覇市では米軍基地の返還が進みつつある。 一方、昨年、落下事故を起こしたオスプレイが配備されている普天間飛行場やキャンプ・ハンセン、嘉手納基地など主要な米軍施設は本島中部に集中しているのが現状だ。 「基地が中部に集中しているため、米兵たちは基地近辺の沖縄市や北谷町、嘉手納町、金武町の歓楽街で飲み歩くのが一般的でした。ですから、羽目を外した米兵による事件は中部に集中していた。ところが、米兵による不祥事が起きるたび、米軍はオフリミッツ(兵士に対する歓楽街への立ち入り禁止)を発令。さらにコロナ禍も重なり、中部の米兵をターゲットにしていた飲食店は衰退していきました。 そのためコロナ禍以降は、米兵は余暇の時間には那覇市内にまで遠征することが多くなった。国際通りや、キャバクラなどの飲み屋が集中する松山という地域には外国人が出入りするクラブもありますが、そうした場所でも酔っ払って騒ぐ米兵の姿を見かけることも珍しくなくなった」(前出の飲食店関係者) ■続発する米兵による性加害事件