市場規模57兆円の「培養食肉」、最終製品ではなく「原型」で勝負するスイス新興
わずか10年間で、ゼロから3700億ドル(約57兆円)を超える規模まで成長する市場はそう多くはない。そのような成長が予想される培養食肉業界には、世界の食品メーカーが大きな関心を寄せている。その中の1社が、スイス発スタートアップのSallea(サレア)だ。同社は10月16日、260万ドル(約4億円)を調達したことを発表した。 実験室で培養される培養肉の市場は発展途上にあり、販売を承認している国は、米国、シンガポール、イスラエル、英国などの一握りの国に限られる。しかし、世界各国で培養肉メーカーが規制当局に申請を提出し、現在審査が行われている。 培養肉の擁護者は、このテクノロジーが家畜を飼育するのに比べて必要な土地や水が格段に少なく、汚染や二酸化炭素(CO2)の排出量も少ないため、環境に優しいと主張する。培養肉は、生きた動物から採取した細胞を含むが、一般的な食肉とは異なり、ベジタリアンやビーガンに適しているという意見もある。 この分野の各社は、見た目から香りや味、食感に至るまで本物の肉にそっくりな製品を量産化する競争を繰り広げている。サレアは、2023年11月にスイスのチューリッヒ工科大学(ETH)で材料科学を研究する研究者たちによって設立された。 「これまで、培養食品はソーセージやひき肉に限られていたが、我々の技術は市場投入までの時間を短縮し、ステーキやヒレ肉の生産コストを下げることで、細胞農業を活性化させる可能性を秘めている」と、同社のCEO兼共同創業者であるシモーナ・フェールマンは話す。 フェールマンが同僚のニコル・クレーガー博士、アンナ・ビュンターと立ち上げたサレアは、最終的なプロダクトを販売するつもりはなく、生産者が培養肉を生産するための「プラットフォーム」を開発している。このプラットフォームは植物由来の材料で構成され、多孔質で立体的なグリッドを提供し、食感のあるステーキやヒレ肉などのベースとなる。 「我々の技術は、生産者が市場に投入したいと考えている第二世代の培養肉に理想的だ」とフェールマンは言う。生産者は、サレアが提供するプラットフォームを使って、培養肉のサイズや形状、栄養プロファイルを調整することができる。