アニメヒットで登場スポットへの訪問者10倍増、映画も〝効果〟高くロケ誘致に動く自治体
映画やドラマといった映像コンテンツのロケ地を誘致する取り組みが各地に広がっている。映像を通じて地域の魅力を発信し、観光客の誘致につなげるのが狙いだ。海や山など、豊かな自然に恵まれた静岡県内では、以前からこうした取り組みに熱心な自治体も少なくないが、新型コロナウイルス禍が収束に向かった昨年あたりからは静岡市も本腰を入れ始めた。背景には、ロケ誘致の驚くべきインパクトと可能性がある。 ■相次ぐ〝聖地巡礼〟 長い海岸線、富士山や南アルプスをはじめとする山々-。風光明媚(めいび)な静岡県には観光資源が多い。葛飾北斎や歌川広重の浮世絵、川端康成の小説の舞台にもなった。昨年はNHKの大河ドラマ「どうする家康」が放送され、静岡市内にある家康ゆかりの名勝や旧跡には多くの観光客が訪れた。 コミックやテレビアニメで人気コンテンツ「ラブライブ!サンシャイン!!」は、静岡県沼津市の女子高を舞台にする。学校自体は架空だが実在する学校がモデルとされ、劇中には周辺地域の施設や名所も登場する。このため、コミックやアニメがヒットすると、たちまち沼津に観光客が訪れるようになった。いわゆる〝聖地巡礼〟だ。 沼津市の担当者によると、劇中に登場する観光案内所「三の浦総合案内所」を訪れた人は平成26年度には約6400人だったが、「ラブライブ!サンシャイン!!」がヒットした29年度には8万4140人が押し寄せた。まだ新型コロナ禍の影響が残る令和4年度も約3万3000人が来訪するなど、観光地として〝定着〟している。 ただ、「経済効果の全容を把握するのは難しい」(沼津市の担当者)。沼津市では、ドラマや映画、CMといったさまざまな映像コンテンツの誘致、いわゆる「フィルムコミッション」に取り組み「ロケなどに伴うスタッフらの宿泊や飲食などの直接効果が年間1500万円程度ある」(同)というが、肝心の〝聖地巡礼〟の効果は算出できないのだ。 沼津市に隣接する富士市も「フィルムコミッション」に市と特定非営利法人(NPO)が取り組む。昨年は257件の問い合わせがあり、17件が市内でのロケに結び付いた。