山口茜が熊本マスターズ初優勝、日本代表それぞれの新たな道 | 熊本マスターズジャパン レビュー
組み替えペアでは、ほかにも女子ダブルスの櫻本絢子/五十嵐有紗(ヨネックス/BIPROGY)が国際大会デビューを飾った。2回戦でパリ五輪銅メダルの志田千陽/松山奈未(再春館製薬所)に敗れたが、五十嵐は「今の実力が知れた。修正点がたくさん見つかったので、これからどんどん良くなって行けると思う、という意味でも楽しかった」と刺激を受けていた。
男子複の保木/小林、蘇った野性味
男子ダブルスの保木/小林は、初の五輪挑戦を終えて、負けられない緊張感からの解放を攻撃力の向上につなげていた。得点時の表情が以前とは違った。取らなければいけない1点を取った安心感ではなく、互いの好プレーに対して驚きや喜びを表現することが多かった。保木は「(世界選手権を制するなど)飛躍した2021年は、楽しんで思い切ってプレーできていた。成績を残す戦いの中で、期待が大きくなり、自分たちのプレーを見失っていた部分もあると思う。今は、ペア結成初年度くらいの気持ちでやりたいと思っている」と試合に対するメンタルの作り方を変えていることを明かした。実際、終盤の競った場面で思い切りの良い攻撃で得点する場面は多かった。小林も「互いに個人の改善ばかり考えて苦しく、パートナーのショットを喜ぶとか普通のことができていなかった。今は、互いのプレーで盛り上がる。ラリーの中で、疲れも感じない。長年経験している自分たちが、そういう感覚でやっていけたら、また新しく勝てるようになるかなという実感がある」とプレッシャーとの付き合い方を変えた戦いに手ごたえを得ていた。23年8月の豪州オープン以来の決勝進出は、新たな歩み方に一つの手ごたえを与える結果となった。
2024年シーズンは、間もなく終わりを迎える。国内では12月に全日本総合選手権が行われ、25年の日本代表が決定する。選手たちが熊本で見せたそれぞれの前進の、その先にはどんな景色が広がっているのか。
文:平野貴也
平野 貴也