ノーベル賞「物理学賞」2015年の受賞は? 日本科学未来館が予想
銀河の回転がおかしい?
■見えない暗黒物質をさぐるきっかけに=ヴェラ・ルービン(Vera Rubin)博士 みなさんは「暗黒物質(ダークマター)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 宇宙には「見えない(=暗黒)物質」があるかもしれないというのです。その量は、私たちが観測できる物質の数倍。言い換えると、私たちが今見ることのできる物質は、宇宙のほんの一部に過ぎないと言うのです。 そんな見えない物質の存在を考えるきっかけとなった、ルービン博士の功績。宇宙に浮かぶ「銀河」という天体を観測し、星々の予想外の振る舞いに気付いたのです。
銀河は、無数の星が集まり、渦を巻くように回転しています。中心がとても重く、そこからの引力に回りの星が引き寄せられるためです。そして、その引力は、中心から離れるほど弱くなります。 ルービン博士の観測は、渦巻きの中心から遠く離れた星と中心に近い星が、ほぼ同じ速さで回転していることを発見しました。これは、予想外のことでした。なぜなら、例えば太陽系を考えると、外側の惑星ほどゆっくり回っています。遠くの星が速く回ると、力学上の計算では、弱い引力を振り切って渦巻きから外れていってしまうのです。 奇妙な星々の運動と力学とのつじつまを合わせるために。「何かこれまでに観測できていない物質(=暗黒物質)が大量にあって、そこから引力が働いているのではないか」。多くの科学者がそうと考えるようになり、現在、暗黒物質を確認するための研究が進められています。ルービン博士の発見を機に、人類は宇宙の真の姿に一歩近づきつつあるのです。 ◎予想=科学コミュニケーター・ヘイチク・パヴェル
表面だけ「スピン流」が流れる絶縁体
■新たな性質の物体を計算から提唱「トポロジカル絶縁体」=チャールス・ケーン(Charles Kane)博士 3つ目は物性分野から「トポロジカル絶縁体の提唱」を紹介します。内部はゴムのように電気を通さないのに、表面だけ金属のように振る舞う不思議な物質の存在を、ケーン博士 は理論計算から予測したのです。