【開発裏話】ランタンスタンドの定番スノーピーク「パイルドライバー」は釣り用品が原型だった?
「パイルドライバーは元々釣り用品としてスタートしたギアなんです」 そう話すのは、スノーピーク企画開発本部長の林さん。スノーピークといえば、品質やデザイン性の高さから人気を集めている、キャンプを楽しむ人なら誰もが知る老舗アウトドアブランドです。 【すべての画像を見る】 「パイルドライバー」(7150円)はキャンプサイトでランタンを吊るすために使う、“ランタンスタンド”と呼ばれるギア。 カメラの三脚のような構造のランタンスタンドが多いなかで、異質とも言えるビジュアルの「パイルドライバー」。見た目が金属の棒なので、キャンパー以外に“これなにに使う棒? 武器? "と言われたことがある人も少なくないのでは? 使い方はそのシンプルなデザイン同様非常に簡単で、ポール最上部を握って地面に向かって打ち込むだけ。 ただ、打ち込む際に、ハンガー部分に手をハサミがちなので、ご注意を。失敗するとすごく痛いんですよね… 長さが最短110cm、最長240cmの間で無段階で調節可能なので、例えばソロ・デュオキャンプなら低めに、ファミリーキャンプ・グループキャンプなら高めに、と人数やキャンプスタイルを選ばずに使用できます。 長さ調節は蝶ネジを締めるだけ。この使いやすさも人気の理由ですね。 また、三脚タイプのものと異なり脚を広げる必要がないので、狭いスペースにも立てられるというのもメリットですね。キャンプ場によっては狭めのサイトもありますから。 そんなパイルドライバーが、元々釣り用品…? 一体どういうことなんだ?
■実は磯釣り用品から始まった異色の開発経緯
「スノーピークは元々、登山用品や釣り道具を取り扱っていたんです」と林さん。今でこそ有名キャンプブランドとして知られていますが、創業した1958年から1980年代までは、登山用品や海釣り用品で人気のブランドでした。 「パイルドライバーは『焚火台』同様、スノーピークの中でも歴史の古い商品のひとつで、その起源は磯釣り用の“磯ピトン"という道具にあります」 磯ピトンとは、磯釣りを行う際にバッカンや釣り竿を吊り下げるための金属製の棒状の道具で、磯の隙間にペグのようなものを打ち込み、そこにスタンドをセットして使います。 スノーピークも1980年代に『ジャンボピトン』という商品を販売していましたが、これが「パイルドライバー」の原型だといいます。 「これはキャンプにもぴったりだ!ということで、ジャンボピトンをベースにキャンプ用に開発したのが『ランタンスタンド』でした。1989年に販売スタートしたのですが、これがあまり売れなかったんです…」 理由はズバリ、価格が高かった。ジャンボピトンは磯釣り用なので、サビに強いステンレス製でした。“キャンプでも野ざらしになることを考れば、ステンレスの方がいいだろう"と、素材をそのままスライドして開発。 その結果、かなり価格が高くなってしまったとのこと。良かれと思ったことが裏目に出るなんて悲しい… その後、現在のスチールにクロムメッキを施した仕様に変更したことで、価格を抑えることに成功。名称も『ランタンスタンド』から現在の「パイルドライバー」に変更し、あとは皆さんがご存知の通り、キャンプの定番ギアにまで成長しました。 「いやぁ、売れてくれて良かったです。どうしても品質にこだわってやりすぎてしまいがちなんです…(笑)」と林さん。