お金の価値よりも、モノ、人、時間、幸せの価値のほうが高い? 物価の上昇と同時に他の価値も上がっている
物価が上昇してしばらくたちますが、物価の上昇はモノの価値が高まることであるため、その裏ではお金の価値が目減りしています。 例えば、これまでは1個100円で買えていたハンバーガーが200円払わないと買えないわけですから、お金の価値は下がったといえます。 私たちは物価が上がったことは実感として分かっていますが、果たして物価だけが上がっているのでしょうか。本当は人や時間、幸せの価値も、物価(モノ)と同時に上がっているのかもしれません。
お金の価値よりも高くなっているモノ、人、時間、幸せ
図表1は、お金の価値よりもモノや人手、時間、幸せの価値が高いことを階段として示したものです。 図表1
※筆者作成 1. 人の価値が高まっている モノの価値が高まっているという話は冒頭でお伝えしたので、人の価値から考えてみましょう。 人の価値を別の言い方で表すと、人手や人材の価値と置き換えることができるかもしれません。身近なところでいうと人手不足が挙げられますが、少子高齢化で働く人が年々減り、多くの業界で人材が足りない状況が長く続いています。 人手が足りないので、より多くのお金を払ってでも人材を確保したいというニーズが高まり、例えば建設業などの一部の業界では、以前と比べて賃金が大幅に上昇しているところもあるようです。 また、人の価値を、人間の尊厳という言葉に置き換えて考えることもできるでしょう。人間の尊厳とは、簡単にいうと人として生きる権利といえますが、近年は児童虐待やDV(ドメスティック・バイオレンス)、性加害といった、人として生きる権利が侵害されている報道などを通じて人権意識が高まっているように思います。 このような人権意識の高まりを労働問題に当てはめると、同一労働同一賃金制度や、非正規労働者を正社員として登用する政策などは、まさに人の価値が以前より高まっている事例といえるのではないでしょうか。 2. 時間の価値が高まっている 次は時間の価値ですが、例えば男性の育児参加は最たるものといえるでしょう。 現在のような共働き世帯が多い社会では、男性も女性も社会に出て、何らかの仕事をしているケースは珍しくありません。一昔前までは、女性が家事・育児を行うというのが当たり前と思われていましたが、女性も会社勤めなどで仕事をするようになり、家事や育児をする時間が足りなくなってきました。 そこで国は、仕事と家事・育児を両立できるように男性の育児参加を促進し、雇用保険制度による育児休業給付の拡充や、企業にも男性の従業員に積極的に育児休業を取得してもらうために助成金制度を設けるようになっています。 こうした政策に国が予算を振り分けた結果、家事・育児に要する時間を生み出しやすくなるというのは、まさにお金の価値よりも時間の価値が高まっていることの表れといえるのではないでしょうか。 3. 幸せの価値が高まっている 少子化対策の一環として自治体などで実施される婚活イベントなどは、未婚者にパートナーと出会う機会を設けて婚姻者数の増加につなげることが目的となっています。 一般的に結婚は幸せなこととされますが、こうしたイベントに予算が投じられるようになったのは幸せの価値が高まっている事例ともいえるでしょう。 また、視点を子育て世帯に変えれば、子どもの数が少なくなっているため、子ども1人にかけるお金がかつてと比べて多くなっている点も、幸せに対する家族の価値観が変わったことを表しているのかもしれません。