AIと暗号資産で「電力」争奪戦? 日本も他人事ではない「ヤバすぎる電力不足」の行方
マスク氏のxAI、電力不足で「移動式の火力発電機」設置?
一方、イーロン・マスク氏のxAIが南部テネシー州メンフィスに建設したデータセンターは、エヌビディア製GPUが10万個稼働するという未踏の規模を目指しているが、現時点で50メガワット分の電力供給しか受けられていないという。これは、単純計算で5万個のエヌビディア製GPUしか稼働できないことになる。これでは、せっかく用意した10万個の最先端GPUの半分が宝の持ち腐れになってしまう。 この電力不足に対応すべく、xAIは11月にテネシー川流域開発公社から追加で150メガワット分の電力供給を受ける許可を取得した。 さらに同社は、外部電力供給が限られてもAIデータセンターを運用できるよう、天然ガスによる移動式の火力発電機を増設しようとしている。しかし、「ガスタービンを州当局の許可を得ずに電力源として使用している」との批判が巻き起こっており、南部環境法センターなどの環境保護団体から反対を受けている。 問題になっているメンフィスのAIデータセンターは規模が他と比較して桁違いに大きいが、それでも電力供給ひっ迫を象徴している。しかも、電力供給が限られた中でAIデータセンターは、「トランプ相場」に沸く暗号資産のマイニング施設と潜在的に電気を奪い合う関係にある。このような状況において、米国は今後どのような道をたどるのか続けて解説する。
マイニング施設が「AIの下請け」になる納得の意味
まず、年率10~20%で増加を続けるとされるAI関連の電力需要だが、現在の「AIバブル」が崩壊することで、そこまで大きく伸びない可能性がある。特にビジネス向け生成AIアシスタント製品に対する需要が低迷する中、必要とされる電力量はより現実的な低めのレベルに修正される可能性がある。 加えて、第2次トランプ政権が発足後も、暗号資産採掘の電力需要は一部の市場関係者が予測するほど急激なペースでは伸びない可能性もある。 さらに注目されるのは、大規模マイニング施設がAIデータセンターの「下請け」となる例が増えていることだ。すでに潤沢な電力供給を確保している一部の大規模マイニング施設が、本来の目的である暗号資産採掘ではなく、演算能力や電力を融通することで利益を上げているという。 米金融大手モルガンスタンレーが8月にまとめた報告によると、100メガワット級の電力供給を受けるマイニング施設が使用目的を暗号資産採掘からAIデータセンター向けリースに変更すれば、AIデータセンター開設にかかる時間を最大で3年半節約できる。これには冷却設備の大幅強化などが必要となる一方で、施設の価値は5倍になるという。