F1昇格も噂されるボルトレトがF2で最後尾スタートから優勝の快挙。1年目での王座獲得も射程圏に……“ラッセル・ピアストリルート”に乗れるか?
先日イタリアのモンツァで行なわれたFIA F2のレースで、マクラーレン育成のガブリエル・ボルトレト(インヴィクタ)が最後尾グリッドからの優勝を果たし、パドックを驚かせた。 【ギャラリー】昔はお金のかけ方も桁違い……ド派手&衝撃のF1発表会、歴代10選 ボルトレトは金曜に行なわれた予選でスピンアウトし、赤旗の原因を作った。この時点でまともなタイムを記録することができていなかったため、ボルトレトはタイトル候補でありながら土曜のスプリントレースと日曜のフィーチャーレースで共に最後尾の22番グリッドからスタートする羽目となってしまった。 しかしボルトレトは土日の両レースで躍動した。21周のスプリントレースでは激しい中団争いをかき分けてポジションを上げ、8位のデニス・ハウガー(MPモータースポーツ)と1000分の1秒まで同タイムという世にも珍しい“同着フィニッシュ”。規定によりボルトレトとハウガーは共に8位扱いとなり、スプリント8位に割り当てられる1ポイントが2等分され付与された。 そして日曜に行なわれた30周のフィーチャーレースでボルトレトはさらに驚きのパフォーマンスを見せた。わずか7周で8番手まで上がると、上位勢が一気にピットに駆け込んだことで見た目上のトップに立った。すると直後にハウガーのマシンが第1シケインでストップしたことでセーフティカーが出されると、ボルトレトはすかさずピットイン。少ないタイムロスでコースに復帰したことで、一躍レースリーダーとなったのだ。 ボルトレトはその後のレースでもリードを守り切り優勝。セーフティカーの恩恵を受けたとはいえ、最後尾から優勝という大きなインパクトを残した。 「こういうことが起こる可能性はおそらく1%もなかっただろう。信じられないよ」 ボルトレトはそう語る。 「僕たちのペースの良さに加えて、セーフティカーが入ったことで全てがうまくいった。あらゆる要素が揃っていたし、ペースもタイヤも素晴らしかった」 「僕はミラノに住んでいるから、モンツァでのレースはホームのようなものだ。ここでこうやってライバルを引き離して勝てるのは嬉しい」 ボルトレトはスタート時の混乱を切り抜けてポジションを上げることに成功したが、1コーナーに向けては視界が悪かったと語る。その先ではタイトル争いを繰り広げるポール・アーロン(ハイテック)が追突によりスピンし、その混乱をかわすために各車四方に散らばった上、タイヤスモークも上がっていた。 「正直なところ(スタートは)覚えていない」とボルトレトは言う。 「かなりクレイジーなスタートだった。ターン1でたくさんの人が飛び出して行った。僕はただマシンを避けようとしていた。あそこでどうやって抜いたのかもわからない」 「マシンをベストポジションに置くためにあらゆることを試した。スタートで唯一覚えているのは、蹴り出しで左にいるマシン……確かトライデントの(ローマン)スタネックを抜いたことだ」 「でも、あとは本当に覚えていない。とにかくクレイジーな状況が起きていて、誰かを避けたり、追い抜いたりしていた」 その後、ボルトレトにとって大きなチャンスとなったのがセーフティカー出動。第1シケインでローディンの宮田莉朋がハウガーのマシンに後ろから僅かにタッチし、スピンしたハウガーが芝の上で止まってしまったのだ。 セーフティカー時にピットに入れたボルトレトはそこで約9秒のアドバンテージを得たと考えられている。当然ラッキーがあったとはいえ、その時点で最後尾からトップ10圏内まで追い上げていたからこそ、勝利に繋がったと言える。 「僕たちはそこ(上位)に来れるとは思っていたけど、優勝を争えるとは思っていなかった。ゼイン(マローニ/ローディン)も速かったし、アイザック(ハジャー/カンポス)もポールも前からのスタートだった」 「でも分からないものだね。これがモータースポーツだし、何が起こるか分からない」 「僕たちはトップ5を目指して戦うつもりだったけど、最終的にレースに勝つことができた。大事なのはどこからスタートするかではなく、どこでフィニッシュするかだね」 昨年はFIA F3参戦1年目でタイトルを獲得し、F2にステップアップしてきたボルトレト。今回の勝利でポイントリーダーのハジャーと10.5ポイント差となり、メルセデスのジョージ・ラッセルやマクラーレンのオスカー・ピアストリが成し遂げてきたような、F3、F2での2年連続でのタイトル獲得も視野に入っている。 マクラーレン育成でありながら、ザウバーの来季ドライバー候補として名前が挙がるなど、注目を集めているボルトレト。今回の結果がチャンピオンシップへの期待にどのような変化をもたらしたかと聞かれ、彼はこう答えた。 「トップに近付くことができたね。今日のような結果を残せれば、どうなるか分からない。エキサイティングだよ」
Sam Hall