1時間23分の真夜中の異例引退会見でイチローは何を語ったか?(1)
シアトル・マリナーズのイチロー(45)が21日、深夜から東京ドームに隣接するホテルで1時間23分にわたる異例の引退記者会見を行った。会見場は200人以上のメディアで埋まっていた。 ユニホーム姿のまま壇上に座ったイチローの引退会見は、「こんなにいるの? ビックリするわ」という呟きで始まった。 「今日のゲームを最後に日本で9年、アメリカで19年目に突入したところだったが、現役生活に終止符を打ち、引退することになりました」 最初に引退を報告したイチローはこう続けた。 「最後にこのユニホームを着てこの日を迎えられたことを大変幸せに感じています。振り返るには28年は、あまりにも長い時間だったので、ここでひとつひとつを振り返るのは難しい。ここでは応援していただいた方々への感謝の思い、そして、球団関係者、チームメイトに感謝を申し上げて皆様からの質問があれば、できる限りお答えしたいと思っています」 【動画】イチロー選手が引退発表「野球を愛すること」貫けた 質疑が始まる。まずは引退を決めたタイミングと理由から聞かれた。 「タイミングはですね。キャンプ終盤ですね。日本に戻ってくる何日前かはハッキリお伝えできないが、終盤に入ったときです。元々、日本でプレーするところまでが契約上の予定でもあった。キャンプ終盤でも結果を出せず、それを覆すことができなかったということ」 ――後悔は? 「今日のあの球場での出来事。あんなものを見せられたら、後悔などあろうはずがありません。もちろん、もっと出来たことがあると思いますが、結果を残すために自分なりに重ねてきたこと……人より頑張ったことはないが、自分なりに頑張ってきたとはハッキリと言える。それを重ねることでしか後悔を生まないということはできない」 ――将来野球選手を目指す子供たちにメッセージをお願いします。 「メッセージかなあ。苦手だなあ。野球だけでなくてもいいんですよね、熱中できるもの夢中になれるものを見つけられれば、それに向けてエネルギーを注げる。そういうものを早く見つけて欲しい。それが見つかれば、自分の前に立ちはだかる壁に向かっていけると思う。それが見つけられないと壁が出てくるとあきらめることがある。いろんなことにトライして、自分にむくか、むかないかよりも自分が好きなものをみつけて欲しい」 ――ふと一番印象に残っているシーンは? 「今日は除いてですよね?」 「この後、時間がたったら今日のことが真っ先に浮かぶ。色々な記録に立ち向かってきたが、そういうものはたいしたことではない。自分にとって、それを目指してやってきたが、いずれそれは、後輩が先輩の記録を抜いていく。そのことにそれほど大きな意味はない。今日の瞬間を体験すると、それが小さく思える。10年間、200本(安打を)続けて、MVP、オールスター……小さなことに過ぎない。去年の5月以降、ゲームに出られない状況になって、その後もチームと一緒に練習を続けてきた。それを最後まで成し遂げなければ、今日のこの日はなかった。残してきた記録はいずれ誰かが抜いていく。去年の5月からシーズン最後の日まで、あの日々は、ひょっとしたら誰にもできないかもしれない、ささやかな誇りを生んだ日々だった。どの記録より、自分の中では、ほんの少しだけ誇りを持てたことかな」