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夏休み。ちょっとお疲れのお母さん、お父さんへ。:子供には退屈も必要。

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
(写真はイメージ:雨が多くても、やぱり良い夏でした!)(写真:アフロ)

疲れているお父さん、お母さん、あなたは十分頑張りました。文句を言っている子どももいるかもしれませんが、「退屈」だって大切です。

■夏休みの子どもと親たち

「夏休み」は、子どもにとっては特別なものです。多くの人が、あのワクワク感を覚えているでしょうし、忘れられない思い出もあることでしょう。一方、大人たちにとってはなかなか大変です。毎日子どもの世話をするお母さん、家族サービスを求められるお父さん。夏休みも終わりに近づき、疲れた保護者のみなさんの声も聞こえてきます。最後に「どっか連れて行って!」と子どもにせがまれている親もいるでしょう。

さて、今年の夏休み。いかがでしたでしょうか。ただ疲れただけ、後悔の数々、子どもとケンカして終わるのでは、残念ですね。

■あなたは、十分な親です

今、この記事を読んでいる父、母、祖父母等のみなさん。あなたは、子どもの保護者として十分です。たしかに、とても不十分な保護者もいますが、そんな人はこんな記事は読まないものです。だから、あなたの子どもへの愛と努力は十分なのです。

あなたが、子どもの個性を尊重し、子どもに人として価値を伝えたいと思うなら、あなたも保護者として自分を認めましょう。どんな子どもでも可愛くて価値があるように、あなたも素晴らしい親、祖父母です。

誰かと比較をしたら、それは不十分な点もあるでしょう。休みがいっぱい取れる親もいるし、休めない親もいます。家族で海外旅行に行くような家もあれば、家族旅行など考えられない家もあります。けれども、よそはよそ、うちはうちです。

お金と時間をたくさん持っている親だけが良い親ではありません。

■なぜ親は自分を責めてしまうのか

親、特に母親は、自分を責めがちです。子どもに何かよく何ことが起これば、全部自分のせいだと思ってしまう母親もいます。それは、子どもへの愛情の裏返しです。しかし、全てを自分のせいにするのは、大きな誤解です。悪いことが全部親のせいなら、良いことも全部親のおかげでしょうか。そんなことはありません。

日本では、「子どもを作る」という言葉があります。外国では、あまりない言葉です。子どもは準備を整えて計画的に作り、最善のことをしなくてはならないと、多くの現代日本人が思い込んでいます。でも、これも誤解です。

 <参考:「子どもという価値―少子化時代の女性の心理 」柏木恵子著(中公新書)>

「子どもには、できるだけのことをしてあげたいとは思いますが、それぞれの家庭の事情があります。事情の許す範囲で良いと思います」(「あなたは世界一のお母さん、世界一のお父さん」Yahooニュース個人有料)。

旅行にも行けず、お昼が毎日そうめんでも、別にかまいません。本当に一ヶ月間そうめんだったら、栄養が偏るでしょうが、2〜3日同じメニューでも別にかまいません。栄養士が献立を作る給食のようにいかなくても、当然です。それもまた、思い出になります。

夏休みに旅行にいかない家はたくさんあります。別に子どもがグレたりはしません。

親が後悔して落ち込んでも、良いことはありません。思うようにいかないことがあっても、別のチャンスに、ちょっとしたことができれば、それで十分です。

■子どもを退屈させよう

先月、「子どもは夏休みに退屈な方が健全に成長できる」という記事が紹介されました。

複数の心理学者・教育学者が、子どもに対して「退屈の勧め」を説いています。〜「退屈は、真の創造性をもたらし得る『内在的な刺激』を発達させるのに不可欠なものである」〜「退屈する能力は、子どもの成長の成果である」〜

出典:子どもは夏休みに退屈な方が健全に成長できる:Gigazine

私はスクールカウンセラーをしていますが、不登校の子どもが退屈し始めるのは、とても素晴らしいグッドニュースだと感じます。退屈は、エネルギーがたまった証拠で、自発性のもとになるからです。

長い長い夏休み。毎日特別なことがあり、毎週イベントがある。普通の家庭はそんなことはできませんし、そんな必要はありません。退屈した子どもたちが、きっとそれぞれに何かをしてきたことでしょう。

みんなに賞賛されるような特別な活動でなくても、それぞれの子どもたちが、自分なりの夏休みを過ごしてきたことでしょう。それで、十分です。

■ピーク・エンドの法則

そうは言っても、やはり良い夏休みにしたいものです。しかし、良いか悪いかは、実は現実の出来事だけによって決まるわけではありません。私たちの記憶が、良い思い出や悪い思い出を作ります。

「ピーク・エンドの法則」と呼ばれる心のメカニズムがあります。一番のピークと、最後の印象が、全体の判断を作り上げるというものです。

今回の夏休みで、一番楽しかったことは何でしょうか。その思い出をたっぷり楽しみましょう。アクシデントもあったかもしれませんが、後から思えば、大笑いのエピソードにもなるののです。記憶は、浄化されるのです。

そして、良い形で夏休みを終わりましょう。最後の最後に、ちょっとしたイベントがあっても良いかもしれません。お金も時間も使わなくても、できるでしょう。ちょっとしたお散歩でも、ちょっと料理を手伝ってもらうのも、いいですね。花火はどうでしょうか。

「楽しい夏休みだったね」と、子どもも、親、保護者も、笑顔で夏休みを終えましょう。良い形で夏休みを終えることが、良い形の登校につながります。

2017年。今年の夏も、良い夏でした。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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