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「男らしさの呪縛」って? みんなで考える#国際男性デー

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11月19日は「国際男性デー」。性の平等と男性の心身の健康と幸福を願い設立されたものだ。日本では男性のアルコール依存症や過労死は女性よりも多く、自殺者の数は2倍にのぼる。その背景の一つと指摘されるのが、「男らしさの呪縛」だ。性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)を調べた内閣府の調査では、男性自身が「男らしさ」という性別役割の意識を強く持っていることが明らかになった。Yahoo!ニュースがユーザーにコメント欄で意見を募集したところ、2000件を超えるコメントが寄せられた。そこからは、男性たちが抱える生きづらさの一端が見えてきた。(10月30日~11月5日のコメント、計2222件を基に構成)(監修:大正大学准教授 田中俊之、デザイン&イラスト:佐島実紗/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)

アンコンシャス・バイアスとは?

日本語では「無意識の思い込み」「無意識の偏見」などといわれる。誰もが潜在的に持っており、それ自体は必ずしも悪いことではないが、意図せず人を傷つけたり、自分自身を縛ったりする側面があると指摘されている。

Yahoo!ニュース コメント欄に集まった意見

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「男らしさを求められたことがある」という声のなかで目立ったのは、恋愛や結婚にまつわる場面で、経済的な負担やリードを強いられることへの疑問だった。また、子ども時代に「男なら泣くな」「男は大学くらい行かないと」などのようなことを言われた、または自分の子どもに言ったことがあるという経験談も目立った。女性のなかには、体格でまさる男性に頼る場面があることを自覚する一方、「女性の給与では家族の生活を支えられない」と男女間の賃金・雇用格差を問題にする声も見られた。また、自ら内面化した「男らしさ」に縛られて身動きがとれない、という悩みを持つ男性もいた。

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「男らしさ」の是非についても、さまざまな意見が集まった。「経済的に不自由のない生活をさせてくれた父をカッコいいと思うし、私もそうなりたい」と肯定する声がある一方、「男らしさ」は男性同士の関係性のなかでもプレッシャーになっていることを懸念する声もあった。また、「男・女である前に、自分らしさを大事にするべきだ」「男性が強くありたい、女性が美しくありたい、ということまでタブーになるのは行き過ぎている」など、性差に対する考え方もさまざまだった。

内閣府がアンコンシャス・バイアスについて初の調査 その結果は?

2021年8月、内閣府は全国に住む20~60代の男女計約1万人を対象に、家庭・コミュニティー領域と職場領域での性別役割、その他性別に基づく思い込みの36項目を調査した。その結果、回答者の76.3%がアンコンシャス・バイアスを持っていることが判明した。

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性別役割意識についての設問では、「女性には女性らしい感性があるものだ」「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」の項目が男女ともに上位となり、5割前後の高い割合となった。

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一方で、男女差が大きく開いた項目もあった。「デートや食事のお金は男性が負担すべきだ」「男性は人前で泣くべきではない」「家を継ぐのは男性であるべきだ」「男性なら残業や休日出勤をするのは当たり前だ」の4項目は、女性に比べ男性の割合が15%程度高い結果となった。

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さらに、男性にそうした性別役割や思い込みについて直接言ったり、言動や態度から感じさせたりしたのは、「父親」「男性の知人・友人」が多く、その影響は家庭や職場などすべての領域に及んだ。一方で職場シーンでは、男女ともに「男性の職場の上司」から性別役割を感じさせられた経験があるとわかった。

近年はジェンダー格差是正の動きや、働き方の変化が加速したこともあり、価値観は変わりつつあるといえる。しかし依然として、男性は女性よりも「経済・社会的に自立してこそ一人前」というアンコンシャス・バイアスを強く内面化している実態が浮き彫りになった。

「男らしさ」について、みんなのギモン

Yahoo!ニュースのコメント欄で多く寄せられた「男らしさ」に関する疑問について、男性学を専門にする大正大学准教授の田中俊之氏に話を聞いた。

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大正大学心理社会学部准教授。専門は男性学。内閣府の男女共同参画推進連携会議有識者議員。2児の父親。

Q.「男らしさ」とは何ですか?
A.何が「男らしさ」とされるかは、時代や社会によって異なります。ただ、社会的な地位の達成、簡単に言うと「勝利」を求められる傾向があります。それをふまえると、「男らしさ」とは、「ある社会において競争を優位に進めるために求められる特性」と定義できます。必ずしも、マッチョという言葉から連想されるような猛々しいものであるとは限りません。具体的には、現代の日本社会では、家族を大切にする優しい男性が評価されていることからもわかるように、かつてよりもスマートな「男らしさ」が優位になりつつあると考えられます。ただ、「論破」に象徴されるような言葉の暴力が称賛される風潮もあり、簡単に結論を出すことはできません。

Q.「らしさ」を求めてはいけないのでしょうか?「らしさ」の否定は多様性を否定することになるのでは?
A.「らしさ」からの自由が認められるならば、「らしさ」への自由も認めるべきだという意見が出てくるのは当然です。ただし、多様性を主張する人たちが、自分たちの都合のいい多様性しか認めないというのはよくある誤解です。例えば、「らしさ」からの自由を求める側でも、「伝統的」家族観や男女観を支持する人々を認める寛容さを持っている場合もあります。「らしさ」の強制こそが多様性の否定であり、「らしさ」を他人にも自分にも押しつけないようにしましょうと主張することは、「らしさ」の否定にはならないはずです。

Q.現状への不満があるのであれば、男性も声を上げたらいいのではないでしょうか?
A.非常に大切な論点ですが、男性にとって声を上げることが簡単ではないことも理解してほしいと思います。2016年に厚生労働省が実施した「自殺対策に関する意識調査」によれば、相談や助けを求めることにためらいを感じるかという質問に対して、「そう思う」と答えた割合は、女性が41.9%だったのに対して、男性は52.4%になっています。世代別に見ると、とりわけ中高年の男性ほど、相談や助けを求めることができない傾向があります。男性だって大変な時には素直に「つらい」と弱音を吐いていいと伝えていく必要がありますし、悩みを受け止める側が男性の「弱さ」に失望しないことも大切です。

「男らしさ」から自由になろう

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性別役割にとらわれない、誰もが生きやすい社会を作るためには、社会全体の意識を変えることや制度の見直しが不可欠だ。その最初のステップとして、男性が「男らしさ」から自由になるために行動できることはないだろうか。田中氏は次のようにアドバイスをする。

「仕事中心の男性は、明日、有休をとってみてください。暇だなと思うかもしれませんが、映画を見たり、友人と会ったりでもいいです。会社に迷惑がかかる、ムダだ、と思うなら生活が仕事中心になっている可能性があります。そして、仕事以外の自分の装いを見つけるため私服を買いに行ってみてください。コロナ禍で時間が生まれた方は、やってみたい趣味を始めてみるのもよいでしょう。いきなり"弱さ"を見せられるようにならなくても、『男らしさにこだわっているかもしれない』と認識するだけで、自分自身に対する見方がずいぶんと変わります」

こうした行動について、周囲の視線が気になって踏み出せない人もいるかもしれない。田中氏は、「男らしさ」のプレッシャーから解放されるためには「プライドを確立すること」が大事だという。

「プライドとは、試行錯誤して何かを達成した際に、『自分の納得』を基準として誇りを持つことで生まれる感情です。よく男性はプライドが高いと言われますが、単に見えを張っているだけにすぎません。本当の意味でのプライドを持っていれば、『男らしくあれ!』とあおられても自分の基準で判断ができるはずです」

記事作成の基となった記事はこちら。【みんなで考えよう】「男らしさ」を、求められた・求めたことはありますか?

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