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「後任決まらず毎晩電話」「有休でベルマーク作業」PTAは必要? みんなで考えるPTAのあり方

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多くの地域で入学式シーズンを迎えている。子どもたちが色めき立つ一方で、同時期に始まるPTA活動に不安やストレスを抱える保護者もいる。

近年、共働き世帯の増加などにより、PTAの担い手不足が取りざたされて久しい。
PTAの上部組織からの脱退も相次いでおり、3月末には東京都小学校PTA協議会が、全国で初めて日本PTA全国協議会を退会した。「PTAは必要なのか」「何のためにあるのか」。元PTA会長の取り組みを紹介し、専門家とともに考える。(Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部/監修:大塚玲子)

この記事、ざっくりいうと?
  • PTAのつらい体験や良かったことなど、さまざまな声が寄せられた
  • PTAを変えるには、丁寧なコミュニケーションや目的を考えることが大切
  • 子どもたちがよりよく過ごすため、保護者と学校の相互理解が重要

PTAの肯定・否定 集まったさまざまな声

図解

【みんなで考えよう】小・中学校の「PTA」で大変だったことや不安はありますか? 経験して良かったことはなんですか?のコメント欄(2023年3月2~3日、計692件)には、 「『子どもが多い時代に』『専業主婦がいる』ことを前提に作られてるシステムだからとっくに破綻してる」といった声や、「会社だとヒエラルキーがはっきりしているが、PTAは互いが権力闘争のマウント取りしているから安定しないのだと思う」という意見も。

また、「私の地域は、PTAに加入していない子は災害時に非常食が出ません。加入の有無で待遇に差を出すくらいなら、ないほうがマシ」といった切実な声もあった。


図解

記事のコメント欄には、PTAを経験してよかったことや乗り越えた方法も寄せられた。

特にコロナ禍での活動に言及する声は多く、「コロナ禍は役員決めが早く決まった。行事がないから、いずれ役員が回ってくるならいま引き受けるということです。みんなが不要と感じていながら前例に従うのは時代錯誤」という意見もあった。また、「会議は極力少なくし、除草作業の外注化などをやりました」と業務を簡素化し、PTA活動を乗り切る様子もうかがえた。


検索データでPTAの関心を可視化

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ヤフーの検索データで「PTA」と一緒に検索されたキーワードを見ると、上記のようなPTAに対する関心が見られた。「役員決め」「入らない」といったキーワードが目立ち、小中学校や「断り方」と組み併せて検索されている。「断る理由」の検索からも、PTA活動に参加したくないことが見て取れる。

「廃止」「広報誌」「いらない」と合わせて検索されており、ヤフーのコメント欄でも「広報誌は外注でいいと思う。データを印刷会社に送って外注したら10分の1の労力で終わる」という意見が寄せられた。
他には、役員の種類やママ友とのトラブル、会費の使い道などが検索されていた。



PTAってどんな組織?

組織図

PTAは、保護者と教職員が協力し、子どもたちの健やかな成長のために活動する組織だ。

戦後、アメリカが日本の民主主義教育を促すためにPTAの結成を指導し、文部省を通じて全国の学校に作られた。多くのPTA活動は、主に委員会や係で行われている。例えば講演会や講習会を企画する「文化委員会」、PTA活動の広報をする「広報委員会」、茶話会の実施や行事の手伝いなどをする「学年委員会」、地域と一緒に活動する「校外委員会」などがあり、登下校の見守りやお祭りの運営、読み聞かせなどの係がある。



会費の使い道

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PTA会費の額は全国で異なるが、年額2000〜3000円台(1世帯または1児童・生徒あたり)のところが多い。会費は、広報誌発行や講習会の開催など、PTA主催の行事や活動にかかる経費や、通信費・コピー代などの運営にかかる経費として使われるが、学校の備品を購入するなど、寄付に充てられるケースも多い。

ヤフーのコメント欄には、「学校の消耗品の購入は、自治体が負担すべき」「備品の修理は公費で賄われるべき」といった声が複数あった。
その他、PTA連合会に所属している場合は、一部が分担金として納められる。



PTA会長経験者と専門家に聞く

林和弘

文部科学省の研究所で科学技術政策の調査研究を行う林和弘さんは、江東区越中島小学校のPTA副会長を1年、会長を4年経験し、会長4年目には江東区の全小学校44校(2016年度時)のPTA連合会会長を兼務で1年間務めた。PTAの取りまとめ役として、どのような工夫をしたのだろうか。


みんなで「なぜ保護者、学校、地域で子どもを見守る組織が必要なのか」再確認する

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林さん
林さん
具体的な取り組みとして、各委員会が、それぞれの活動内容をグーグルの「スプレッドシート」に記入して、役員みんなが全体の活動記録を見られるようにしました。情報が見えると気づくことも多く、活動も活発になりました。みんなの帰属意識も高まったと思います。

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林さん
林さん
ペーパーレス化も進めましたが、何でもデジタル化すればいいというわけではありません。
例えば、アプリでお知らせを配信しても見てもらえない可能性がありますが、手渡しすれば必ず目を通すことになります。そもそもデジタル化にどれだけ慣れているか、PTAによって温度差もあるかと思います。
デジタル化は推進しつつ、状況を踏まえて、ときにはアナログのよさを尊重しながらデジタルの利便性を伝えました。

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林さん
林さん
コミュニケーションについては、相手の意見を否定せずに、傾聴することを心がけました。
みなさん家事や育児、仕事など、それぞれの事情があるので、「無理をせず、できる範囲でやれることを楽しくやっていきましょう。親の背中を見て子どもは育つから」とよく言っていました。
そのように伝えると、多くの保護者が協力してくれました。

今、PTAに対するさまざまな課題が議論されていますが、重要なのは、なぜPTAないしは、保護者・学校・地域で子どもを見守る組織が必要なのかを再確認することです。そのような全体意識を持つことが大切だと思います。



大塚玲子

PTAをテーマに長年取材を続けているライター、ジャーナリストの大塚玲子さんは、「PTAでつらい思いをする人をいなくするためにはどうしたらいいのか」考え続けてきたという。PTAに違和感を抱き、変えたいと思ったら、どうしたらいいだろうか。

子どもたちがよりよく過ごせるようにするために

表

Q. PTA役員になったときの心構えを教えてください。

大塚さん
大塚さん
まず、PTAは学校とは全く別の団体だと認識する必要があります。
PTAは学校との線引きがあいまいで、よく「学校の一部」のように誤解されていますが、学校の付属機関ではありません。保護者も教職員もいつの間にか会員にされることが多いため、必ず入らなければならないと思われがちですが、任意加入の団体で入退会も自由です。活動に対して命令を受けたり、強制されたりするものではありません。学校や教育委員会、自治会などから頼まれごとがあったとき、仕事量が多くて負担なら量を減らしてもいいし、無理だと思ったら断ってもいいのです。

Q. PTAを変えたいと思ったときに、どのようなことから始めるといいですか?

大塚さん
大塚さん
保護者や教職員に、みんなが変えたい、いらないと思っていることを聞いてみて、そこから手をつけていくのもいいと思います。ウェブ上のアンケートフォームを活用すると便利です。また、毎年なり手がいなくて押し付け合いになっているようなものも、思い切ってやめるといいのではないでしょうか。ちなみに、なり手が出ずに困っているとよく聞くのが広報委員です。やりたい人がいればいいですが、やりたくない人を無理に選出してまで作る必要はないと判断するPTAが、今は増えてきている印象があります。

Q. 周囲への伝え方などコミュニケーションで気をつけることはありますか?

大塚さん
大塚さん
考え方が異なる人には、感情はいったん横において、丁寧にコミュニケーションするほうが早道だと思います。

自分よりも世代が上の人は、単純に今の時代のことを知らないだけかもしれません。例えば、「今の保護者の状況は、20〜30年前と違って、お母さんだからといって家にいる時代じゃない」ということを伝えると、意外に「そうだよね」とすんなり納得してくれたという話も聞きます。地域やOBが反対しそうだからと前例踏襲を続けることが多いですが、まず相手の話を聞いて、自分も正直に話してみることが大事です。

Q. 将来的に、PTAはどのような形になるといいと思いますか?

大塚さん
大塚さん
私はPTAがどうなるというよりは、保護者と教職員の関係がどうなるといいか、という考え方をします。 現状、保護者と教職員のコミュニケーションが十分でないことが多いです。先生たちが忙しすぎることも大きいですが、必要な情報をお互いに渡せていなくて、誤解も生じやすいです。お互いを理解し合えたら、もっと前に進める方法や、課題を解決する方法を一緒に考えられると思います。

それができるようになれば、保護者と学校がやるべきこと、子どもたちがよりよく過ごせるようにするためにどうしたらいいかを、考えていけるようになると思います。 PTAでできるならそれでもいいですし、別の組織でもいいかもしれません。保護者と教師が対等に、前向きな関係で取り組んでいけるといいと思います。

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