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「子どもにスマホは必要?」――安心と後悔、ゆれる保護者たちの声

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春の新生活需要と決算セールが重なる3月は、携帯電話業界最大の商戦期とされる。進学・進級を機に、子どもにスマートフォン(以下、スマホ)を持たせる予定の保護者も多いのではないだろうか。子どものスマホ利用については、コミュニケーションや利便性が高まる一方で、「スマホ依存」やSNSトラブルなどの問題も増えている。Yahoo!ニュースがコメント欄で小中高生がスマホを持つことのメリット・デメリットについて意見を求めたところ、2700件を超えるコメントが寄せられた。そこからは「安心」と「後悔」という、スマホに対する保護者たちのゆれ動く心情が浮かび上がってきた。(2月1~8日のコメント、計2724件を基に構成)
(Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部/監修:成蹊大学客員教授・ITジャーナリスト 高橋暁子)

メリットが大きいと考える意見

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目立ったのは、安全確認や連絡手段としての利点を挙げる声だった。「北海道で数日間停電した際、情報収集や緊急連絡に役立った」など災害時の体験を語る人のほか、「昔のように公衆電話がすぐ見つからない」「共働きも多く、家に帰ればいつも母親がいる時代ではない」と、環境の変化を理由にスマホを持たせることを選択する人も多かった。「コロナ禍で娘が登校できない状況になった際、クラスメートがノートの内容を写真で送ってくれた」と、コミュニケーションツールとしての利便性を実感する声もあった。総じてスマホのリスクを認識しつつ、メリットのほうが大きいと判断している意見が多かったが、一部では「デジタル化が進む時代、早いうちに慣れさせるべき」「交友関係や学習の幅が広がった」「子どもにスマホの使い方を教わって、仕事の成果が上がった」などと、全面的にポジティブにとらえている声も見られた。

デメリットが大きいと考える意見

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デメリットが大きいという意見は、実体験をベースにしたものが多かった。「高校生から持たせたが、家族で会話することが減り、運動量も減った」「わが子は大丈夫だと信じていたが、しかる原因の9割はスマホ。スマホのない時代に子育てがしたかった」。教員をしているという投稿者の声からは「スマホを起因にしたいじめや不登校など、本当にさまざまなトラブルが発生している」「中学校では保護者の"後悔"の声が圧倒的に多い」と、家庭だけでなく教育現場にも影響していることがうかがえた。また、すぐに調べ物や連絡ができるスマホの利便性に慣れ、「困る経験」が不足したまま社会に出ることを懸念する声もあった。「かなりの依存性を持ったアイテムなのに、他の物より規制がないのが不思議」と、大きな枠組みでのルールづくりを求める意見も見られた。

ほかにもこんな意見が......

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「大人でもスマホ依存に陥っている人は多い」「子どもの手本となるよう、リテラシーを身につけるべきなのはむしろ大人では」など、スマホの問題は子どもだけにとどまらないという意見も目立った。また、「もう『早い』とか『持たせるな』とは言えない時代。交通教育と同じように、ルールを教えるべき」「火や包丁と一緒で、使い方次第」など、スマホの是非を問う段階ではなく、「使い方」を重視する声も。子ども専用アプリやスキルレベルに合わせた機種の充実など、子どもが安心して使える環境の強化を望むコメントもあった。さらに、スマホ以外の選択肢として「将来に役立たせるなら、プログラミングなどを学べるパソコンのほうがいい」「位置情報を把握できるスマートウォッチで十分」などの意見が挙がった。

子どもが「自分のスマホ」を持つのは何歳から? 実態は

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内閣府の「青少年のインターネット利用環境実態調査報告書」(令和2年度)によると、インターネットを利用している青少年のうち、自分専用のスマホを持っている割合は6~9歳では低く、家族と共有している割合が高い。逆転するのが、12歳のタイミングだ。つまり、小学校卒業から中学校入学の時期にかけて、多くの子どもが自分専用のスマホを持ち始めることがうかがえる。また高校生になると、9割以上が所持する結果となっている。

「要注意」は中学生? スマホのトラブルの傾向は

子どもとスマホの問題に詳しい成蹊大学客員教授でITジャーナリストの高橋暁子さんに、学齢別で注意したいスマホのトラブルについて取材し、傾向をまとめた。

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SNSや10代のネット利用、情報リテラシー教育、ICT教育について各種メディアでの執筆、講演、監修などを行っている。教育出版中学校国語の教科書にコラム掲載中。SNS関連の著作は20冊以上。元小学校教員。

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小学生の低学年はスマホを家族と共有している場合が多く、スマホ本体を壊す、なくすといった物理的なトラブルが目立つ。一方で高学年になると女児が積極的に使い始め、サービスの対象年齢外にも関わらず自撮り写真や動画をSNSにアップするなど注意が必要な行動が増えてくる。また高額な課金請求など、オンラインゲームの相談件数が最も多いのは小学生とされる。

中学生は、特にトラブルが起こりやすい時期だ。自分専用のスマホを持ち始め、サービスの利用年齢に達し「SNSデビュー」をするタイミング。使い始めでコントロールができず、「スマホ依存」にも陥りやすくなる。また反抗期で保護者に反発をしたり、思春期で性に関心が芽生えたりする時期でもある。こうした要因が重なることが、トラブルが多い理由とされる。

高校生になると、スマホの利用時間を自分で制限できるようになったり、学習のために活用したりといった「セルフコントロール」が可能になってくる。一方で、交友関係やプライベートを保護者が把握できず、トラブルが顕在化しづらくなる。また、お金欲しさで「裏バイト」などの犯罪や詐欺被害に巻き込まれるなど、注意が必要な点もある。

高橋さんは、コロナ禍ならではのトラブルも増えつつあると話す。

高橋さん
高橋さん
オンライン配信における、高額な「投げ銭」のトラブルが増えています。「相手が喜ぶから」と小学生が親のクレジットカードで100万円ぐらいのお金を勝手に使った例もありました。コロナ禍でリアルの対面が難しいなか、子どもの間でもコミュニケーションのオンライン化が進んでいることが背景にあります

みんなの疑問に専門家が回答

コメント欄の投稿から、多くの人が抱いていることがうかがえた「子どもとスマホについての疑問・悩み」。高橋さんに回答してもらった。

Q.子どもにスマホを持たせる適切なタイミングはいつ?
A.子どもや環境により異なります。子ども自身が持ちたいと思い、部活の連絡用などの必要性が出てきたら、話し合って持つのがいいでしょう。一方で、緊急連絡用であれば、キッズケータイやGPS端末でも役に立ちます。スマホは端末代や月額料金が高額になりがちで、一度持たせたら後戻りはできません。便利ですが誘惑も多く、保護者が管理や見守りをする必要があります。スマホを持たせる場合は、使い始めの時期に子どもと話し合って約束やルールを決めて利用するといいでしょう。

Q.保護者がリテラシーを身につけるにはどうすればいい?
A.今の保護者の多くは、情報リテラシー教育を受けていない世代です。そのためスマホについても「自信がない、よくわからない」という方も多いと思いますが、卑下する必要はありません。大人ならではの経験・知識・常識・判断力で防げる被害は多いのです。ただし、今起きている被害やトラブルについては、アンテナを立てる必要があります。普段からニュースに関心を持ち、スマホやネット関連で起きている事件を知っておくだけでも、リテラシーの向上につながります。その際、ニュースを親子で共有しておくと、子どものリテラシー教育にもなるのでおすすめです。

Q.子どものスマホ利用について、家庭だけでなく、学校や国・携帯キャリアによる対策も必要ではないでしょうか?
A.政府は「青少年インターネット環境整備法」を施行、改正などしています。18歳未満の子どもが使用するスマホに対してフィルタリングのサービス提供の義務化が定められたほか、啓発活動などにも力を入れています。子どものスマホ利用における安全性を高めつつ、リテラシーを高めようという意図です。携帯キャリアは未成年が契約する際にはフィルタリングをかけるよう保護者に声かけをしており、LINEなどの企業によるスマホの安全教室も数多く行われています。

家庭でできることは?

悩める保護者を救う?「ペアレンタルコントロール」を活用しよう

子どもがスマホを適切に利用するため、家庭では何をすればいいのだろう。高橋さんは「スマホに関する保護者の悩みの多くは、ペアレンタルコントロールで対応できる」と言う。

ペアレンタルコントロールとは、保護者が子どものスマホ利用を適切に管理する対応全般のこと。具体的には、家庭内で話し合ってルールを決めた上で、スマホやアプリのペアレンタルコントロール機能を使って管理することを指す。ペアレンタルコントロール機能には、「1日に利用できるのは◯時間まで」「◯時~◯時の間は利用休止」など利用時間の管理・制限、有害サイトを見せないようにするコンテンツのフィルタリング、特定のアプリの利用やインストールの制限、決済・課金の制限などが含まれる。

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ペアレンタルコントロール機能の設定方法は、スマホのOS(iOS、Androidなど)や契約する携帯キャリアによって異なる。こうした設定に、苦手意識を抱く人も多いだろう。高橋さんは「保護者に最低限やってほしいこと」として、次のことを挙げる。

高橋さん
高橋さん
子どもがスマホを使い始めたばかりの時期は、年齢に合わせたコンテンツのフィルタリング機能を設定してください。各携帯キャリアの「あんしんフィルター」サービスには、「小学生モード」「中学生モード」など学齢別の設定も用意されています。またスマホ依存を防ぐために、利用時間がわかるようにしましょう。iPhoneのiOSなら「スクリーンタイム」機能、Androidなら「Digital Wellbeing(デジタル・ウェルビーイング)」機能で確認、制限できます。

(参考サイト)
■各携帯キャリアが提供する機能と設定方法(外部サイト)
NTTドコモ
au
ソフトバンク

■各OSが提供する機能と設定方法(外部サイト)
iOS「スクリーンタイム」機能
Android「Digital Wellbeing」機能

スマホの使い方についてルールを決めることも、ペアレンタルコントロールの重要な手段のひとつだ。Yahoo!ニュースのコメント欄では、各家庭で実施しているルールについても、さまざまな声が寄せられた。その一例を紹介する。

  • 「リビング以外では使わない」
  • 「夜は親が預かっておく」
  • 「親がスマホの中身をチェックする可能性があることを伝えておく」
  • 「月1ギガの格安プランで契約し、通信容量をどうやりくりするかを子どもに考えさせる」
  • 「宿題などの勉強に費やした時間の分だけ、スマホでゲームをしてもいいルールがある」
高橋さん
高橋さん
家庭内で決めたルールは、ペアレンタルコントロール機能を使って管理することで、子どもが守りやすくなります。また、成長に合わせて子ども自身が使い方をコントロールできるようになったら、徐々に制限を解除していくといいでしょう。

「スマホがある時代」の子育て、心がけておくことは

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高橋さん
高橋さん
子どもはスマホ本体や流行のアプリを使いこなすスキルは高くても、社会経験は圧倒的に大人より不足しています。だからこそ、トラブルが起きたときのために日ごろから子どもと何でも相談できる関係を築いてほしい。できればスマホを持たせてからではなく、スマホを持たせる前から意識していただきたいです。

子育てと同じで、スマホも保護者が管理する状態から、子どもが適切な使い方を学び「セルフコントロール」できる状態になることがゴールです。最近の高校生のなかには、SNSで「勉強垢(あか)」と呼ばれるアカウントを作って、勉強中の様子を動画でタイムラプス撮影している子もいます。撮影している間はスマホを触らずにすむので、勉強もはかどる。彼らなりにうまく使いこなしているのです

自律できるまでの間は、保護者によるペアレンタルコントロールが必要です。スマホやアプリの設定が難しいなら、周囲の詳しい人に聞いたり、動画で手順の解説を見たりしてみる。「よくわからない」と放置するのではなく、子どものために一歩踏み出して、ぜひペアレンタルコントロール機能を活用してください

記事作成の基となった記事はこちら。【みんなで考えよう】小中高生がスマートフォンを持つことによるメリットとデメリット、どちらが大きいと思いますか?

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