解説事の始まりは2014年、欧州議会の国民戦線(当時)の秘書給与を政党活動のために流用していたのではないかとの疑いが持たれた。調査によると15年間にわたって700万ユーロもの公金が転用されていたとされ、EUの対汚職庁がルペンに返金を求めた所、これが拒否されたために、給与から天引きされる事態になった。 今回は、2015年から始まったフランス検察側の調査結果を受けての訴追内容。裁判で負ければルペンは市民権剥奪と禁固刑、罰金刑を受けることになり、当然ながら2027年の大統領選出馬は難しくなる。 ただし判決が出るまでにはかなりの時間を要することになる。2016 年から始まったサルコジ元大統領に関する違法資金調査の判決はまだ出ていないなど、こうした事件は控訴が続くためだ。27年までに結審することはまずないだろう。
コメンテータープロフィール
専門は比較政治、欧州政治。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(学術博士)。日本貿易振興機構(JETRO)パリ・センター、パリ政治学院招聘教授、ニューヨーク大学客員研究員、北海道大学法学研究科教授等を得て現職。フランス国立社会科学高等研究院リサーチ・アソシエイト、シノドス国際社会動向研究所理事。著書に『アフター・リベラル』(講談社現代新書)、『ポピュリズムを考える』(ちくま新書)、『感情の政治学』(講談社メチエ)『ミッテラン社会党の転換』(法政大学出版局)、編著に『ヨーロッパ統合とフランス』(法律文化社)、『現代政治のリーダーシップ』(岩波書店) など。