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辻本典央

辻本典央

認証済み

近畿大学法学部教授

報告

解説本件は、刑法規定の解釈・適用をめぐり、裁判で見解が分かれました。 刑法126条は、乗客が乗った列車を転覆させた場合に、最高で無期懲役の刑を定めており(1項)、それによって人を死亡させた場合に最高で死刑を定めています(3項)。走行中の列車を転覆させ、その乗客が死亡したという場合が典型例です。 これに対して、本件は、無人の列車を暴走させ、その結果、周囲の人に死傷結果が生じたというものでした。この場合、刑法は、まず列車の往来の危険を生じさせた行為を処罰することとし(125条1項)、それによって列車を転覆等させた場合には、126条と同様に処罰すると定めています(127条)。 この点で、無人列車の場合も126条1項が適用されるのはよいとして、3項の適用の当否が問題となりました。条文解釈だけでなく、車外の人に対する死傷結果も含むべきかという、その趣旨も問われたわけです。

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コメンテータープロフィール

旅行会社勤務を経て29歳で立命館大学に入学し、3年生の時に司法試験に合格。卒業後は京都大学大学院法学研究科に進み、刑事法を専攻。2005年に近畿大学法学部専任講師となり、現在は教授。2011年から2012年にかけて、ドイツ・アウクスブルク大学客員教授を務める。専門は刑事法全般(特に刑事訴訟法)。著書は、『刑事訴訟法』、『刑事手続における審判対象』、『刑事弁護の理論』(全て単著)。法学博士。趣味は洋画鑑賞、水泳、見る将(大山・中原時代からの筋金入り)。

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