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辻本典央

辻本典央

認証済み

近畿大学法学部教授

報告

解説本件は、選挙の立候補者が他の候補者の選挙活動を妨害したとして逮捕された事件ですが、過去に例を見ない異例の展開となっています。 公職選挙法は、選挙期間中における候補者の演説を妨害した場合には、これを処罰することとしています。例えば、ヤジなどが想定されます。ただし、過去に聴衆が演説を妨害したとして起訴された事件では、他の聴衆が内容を聴き取りがたくなるほど執拗な場合に処罰に当たるとして、制限的な解釈が示されていました。ヤジも表現の自由の一つであり、軽度なものは処罰に該当しないというわけです。これが候補者自身の行為となると、なおのこと、刑罰をもって制限することが控えられてきたわけです。 もっとも、令和2年の国会では、候補者自身の行為もこの罪に当たるとの質問・答弁がなされており、最近は随所で問題となっていたようです。本件は、正当な言論と可罰的な妨害行為との線引きという意味で、注目されます。

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コメンテータープロフィール

旅行会社勤務を経て29歳で立命館大学に入学し、3年生の時に司法試験に合格。卒業後は京都大学大学院法学研究科に進み、刑事法を専攻。2005年に近畿大学法学部専任講師となり、現在は教授。2011年から2012年にかけて、ドイツ・アウクスブルク大学客員教授を務める。専門は刑事法全般(特に刑事訴訟法)。著書は、『刑事訴訟法』、『刑事手続における審判対象』、『刑事弁護の理論』(全て単著)。法学博士。趣味は洋画鑑賞、水泳、見る将(大山・中原時代からの筋金入り)。

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