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園田寿

園田寿

認証済み

甲南大学名誉教授、弁護士

報告

補足薬物問題は、常に時代的な文脈で検討されるべきである。1930年代から1945年(終戦)までは覚醒剤によるパフォーマンス向上は日常的であり、戦後になってその習慣は軍隊から社会全体にまで拡大した。 もともと国内ではアヘンを厳禁していた日本は、国外では利益追求のために奨励するという二面的な薬物政策をとっていたが、戦時中に劇的に変質した。戦争という大きな圧力に、政府は兵士に覚醒剤の使用を許容し、ときには奨励した。1941年に「ヒロポン」の製造が始まり、開戦時には20種類以上の覚醒剤が販売されていた。その後、総力戦は、生産ラインにいる末端の民間労働者を戦闘に引き込み、生産性向上(愛国心の証)のために覚醒剤が多用された。 戦後は敗戦で疲弊した人びとの活性化のために、製薬業界は覚醒剤を作り続けた。政府がその危険性に気づいたのは、何人かの著名人の死亡が問題になった1948年になってからであった。

コメンテータープロフィール

園田寿

甲南大学名誉教授、弁護士

1952年生まれ。甲南大学名誉教授、弁護士、元甲南大学法科大学院教授、元関西大学法学部教授。専門は刑事法。ネットワーク犯罪、児童ポルノ規制、薬物規制などを研究。主著に『情報社会と刑法』(2011年成文堂、単著)、『改正児童ポルノ禁止法を考える』(2014年日本評論社、共編著)、『エロスと「わいせつ」のあいだ』(2016年朝日新書、共著)など。Yahoo!ニュース個人「10周年オーサースピリット賞」受賞。趣味は、囲碁とジャズ。(note → https://note.com/sonodahisashi) 【座右の銘】法学は、物言わぬテミス(正義の女神)に言葉を与ふる作業なり。

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