Yahoo!ニュース

志田陽子

志田陽子

認証済み

武蔵野美術大学教授(憲法、芸術関連法)、日本ペンクラブ会員。

報告

この決定は、真正面から憲法判断をするような内容の決定ではなく、会場使用の取り消し処分を、この件に関する裁判の第1審判決が出るまで、暫定的に保留する、というものです。「緊急」という言葉を、緊急だから行政の判断に従いなさいという方向で使うのではなく、会場を使用しようとする市民の権利を救済するニーズのほうに認めた判断です。 この使用取り消しによって主催者が受ける損害は 事後的に金銭で回復することは困難なものだ、ということから、この件には表現者側の重大な損害を避けるための「緊急の必要がある」と判断しています。全体を読むと、この部分に憲法上の「表現の自由」を重く読み込んでいます。 そうした総合判断として、このケースは大阪府条例でいう「管理上の支障」とは認められない、としています。警察によっても抑えられないような事態があって初めてそれが認められる、という解釈です。 理路のしっかりした正当な判断です。

こちらの記事は掲載が終了しています

参考になった401

コメンテータープロフィール

志田陽子

武蔵野美術大学教授(憲法、芸術関連法)、日本ペンクラブ会員。

東京生まれ。専門は憲法。博士(法学・論文・早稲田大学)。2000年より武蔵野美術大学で 表現者のための法学および憲法を担当。「表現の自由」を中心とした法ルール、 文化芸術に関連する法律分野、人格権、文化的衝突が民主過程や人権保障に影響を及ぼす「文化戦争」問題を研究対象にしている。著書に『文化戦争と憲法理論』(博士号取得論文・2006年)、『映画で学ぶ憲法』(編著・2014年)、『表現者のための憲法入門』(2015年)、『合格水準 教職のための憲法』(共著・2017年)、『「表現の自由」の明日へ』(2018年)。

関連リンク(外部サイト)

志田陽子の最近のコメント