解説政権が崩壊したとはいえ他国の領土を空爆するのは軍事侵攻であり、主権の侵害にあたる。グテーレス事務総長による批判はきわめて正当な指摘であると言える。中東ではガザやレバノン、シリアなど大規模な戦闘が継続する中で、国際世論も過大な暴力に感覚が麻痺しつつあるが、国際法上許されない行為が野放図に展開していくのを認めてはならない。 同様の指摘をグテーレス事務総長はイスラエルに対して、昨年10月の開戦以降、繰り返しているが、それに対してイスラエルからは「ペルソナ・ノングラータ(招かれざる人物)」指定を受けている。国連の事務総長が入国拒否対象とされるのはきわめて異例である。戦争が続く中で、国際秩序が維持されず、それまでの規範が順守されなくなってきていることを示すひとつの指標と言える。
コメンテータープロフィール
専門はパレスチナ/イスラエルを中心とした中東地域研究、移民/難民研究。東京大学法学部卒業、同法学政治学研究科修士課程修了、総合研究大学院大学文化科学研究科博士課程修了、博士(文学)。早稲田大学イスラーム地域研究機構研究助手、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所准教授等を経て、現職。ベイルート・アメリカン大学客員研究員、ヘブライ大学トルーマン研究所客員研究員、ロンドン大学東洋・アフリカ研究学院客員研究員などを歴任。単著に『ディアスポラのパレスチナ人―「故郷(ワタン)」とナショナル・アイデンティティ』、編著に『政治主体としての移民/難民――人の移動が織り成す社会とシィティズンシップ』など。
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