アサド政権崩壊でシリア難民に帰国の動き 長期の避難で海外に生活基盤築き様子見も
シリアでアサド政権が崩壊し、海外に避難した難民の間で帰国する動きが出ている。ただ、恐怖に基盤を置いた独裁に加えて2011年には内戦が始まったため、避難生活が長期に及んで外国に生活基盤を築いた人も多い。国内情勢の安定はまだ約束されていないこともあり、当面は様子を見る向きも少なくないようだ。 政権が崩壊した8日以降、隣国レバノンとシリア南西部を結ぶ検問所には、長い車列ができている。9日にはトルコのエルドアン大統領がシリア北西部との境界にある検問所を開くと発表し、多数のシリア難民が列を作る様子が欧米メディアで流れた。 中東の衛星テレビ局アルジャジーラ(電子版)によると、シリアの人口は11年には2100万人だったが内戦の過程で50万人近くが死亡、100万人以上が負傷した。国内避難民は少なくとも740万人いる。 海外に出国したのは約620万人。スイスで暮らす男性(42)は9日、産経新聞の交流サイト(SNS)による取材に「もちろん帰国する。一番早いシリア行きの航空便を予約する」と喜びを語った。 周辺諸国で最も多くのシリア難民が暮らすのはトルコで、約310万人に上る。政府が一時期、内戦の激化に伴ってシリアからの流入を黙認したことも一因だ。このため、トルコの市民からは「働き口を奪われた」「家賃が高騰した」といった不満も聞かれ、摩擦が起きていた。 在トルコの男性ジャーナリスト(58)は、「シリア人はトルコ国内で就職したりビジネスを営んだりしており、そう多くが経済が低迷しているシリアに戻ることはないのでは。シリア人は安い給料でも働くから、多数がいなくなればトルコの会社経営者も困るだろう」と話した。(中東支局 佐藤貴生)