見解年金保険料の拠出は将来の年金給付につながっており、保険料負担の発生を単なる増税とみなすのは間違いであり、政策の議論をミスリードしてしまいます。低い年収で被用者として働く人たちの老後を厚生年金でカバーする必要性は非常に高いのです。もちろん、現時点での手取りを減らす効果はあり、ここにかかる労働者と事業主の行動の変化はよく検討しなければなりません。しかし、現行の最低賃金の水準での雇用契約であっても、週20時間働くのであれば、それは従来の「壁」の水準である106万円に到達するのであり、今回の106万円の壁撤廃を見送ったとしても、今後も賃金の上昇が続くのであれば、この条件の前後で働く労働者にとっては、社会保険の適用となって将来の年金を上げる働き方を選ぶか、それとも扶養の範囲内にとどまり、所得を上げないために労働時間を減らす、という選択となることは、よく認識しなければなりません。
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コメンテータープロフィール
1973年愛媛県生れ。横浜国立大学大学院国際社会科学研究科単位取得退学、博士(経済学)。専門は、公共経済学、財政学、社会保障の経済分析。主な著書・論文に「都道府県別医療費の長期推計」(2013、季刊社会保障研究)、「少子高齢化、ライフサイクルと公的年金財政」(2010、季刊社会保障研究、共著)、「長寿高齢化と年金財政--OLGモデルと年金数理モデルを用いた分析」(2010、『社会保障の計量モデル分析』所収、東京大学出版会、共著)など。