見解第二期トランプ政権の安保政策を見通す上で焦点となるのは、「危機に備えるための政策」と「危機に直面したときの政策」が一致するかという点です。「力による平和」を掲げているトランプ陣営は、強い米軍とそれを支える国内防衛産業基盤の再建に熱心です。したがって、国防予算は増額傾向に向かい、台湾有事に必要となる艦艇や航空機、各種ミサイル・弾薬、無人機等の取得・投資は進むことになるでしょう。これは安心材料です。 他方でそうした準備をしておきながら、実際に危機に直面した場合にトランプ氏がどう反応するかは未知数です。第一期政権でもシリアへのミサイル攻撃やイランのソレイマニ司令官殺害を指示したりしましたが、いずれも米軍がほぼノーダメージで実行できる作戦にとどまっていました。 我々としてはこの4年間を台湾有事への準備期間と捉えつつ、そのリスクを2029年以降に先送りすることを短期目標とすべきでしょう。
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コメンテータープロフィール
岡崎研究所や官公庁で戦略情報分析・政策立案業務に従事したのち、2019年より現職。マクマスター元国家安全保障担当大統領補佐官らと共に、日米防衛協力に関する政策研究プロジェクトを担当。専門は、日米の安全保障政策、核・ミサイル防衛政策、抑止論など。 【近著】 -ブラッド・ロバーツ(監訳・解説)「正しい核戦略とは何か」(勁草書房、2022年) -峯村健司他(共著)「ウクライナ戦争と米中対立 帝国主義に逆襲される世界」(幻冬舎新書、2022年) -森本敏、高橋杉雄他(共著)「新たなミサイル軍拡競争と日本の防衛」(並木書房、 2020年9月)
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