見解難しい問題に沈黙しているより意見を発信する姿勢は誠実なものだが、性加害という人権問題について、タレントとファンとの間の理解と、日本社会や海外との理解との間に齟齬が生まれていくことを危惧する。海外メディアの受け止めは厳しい。喜多川氏の性加害は、米ハリウッドの大物プロデューサーという地位を利用し、数十名に及ぶ女性に性加害を続けてきたワインスタインの事件に匹敵する事件として報道され、先日のジャニーズ事務所の記者会見は、米CNNや英BBC、香港South China Morning Post等でも詳報された。藤島氏が長年、疑惑を知りながら対応しなかったこと、新社長の東山氏にも性加害疑惑があることも報じられている。米国ではザ・ワインスタイン・カンパニーが責任を追及され続け、最終的に破綻したことに比して、ジャニーズ事務所の対応はあまりに甘く、性加害の重大さを理解していないとの批判の声も上がる。
コメンテータープロフィール
アメリカ政治・外交、国際関係論、平和研究。東京大学教養学部卒、同大大学院総合文化研究科で博士号取得(学術)。日本学術振興会特別研究員、早稲田大学助手、米国ハーバード大学、ジョンズホプキンズ大学研究員、関西外国語大学助教、高崎経済大学経済学部国際学科准教授を経て2022年より現職。著書に『戦争違法化運動の時代-「危機の20年」のアメリカ国際関係思想』(名古屋大学出版会、2014年)共訳・解説に『リベラリズムー失われた歴史と現在』(ヘレナ・ローゼンブラット著、青土社)。