解説核廃絶に加え、いくつもの強い訴えがあった。その1つは、戦争被害についての「受忍論」の痛烈な批判だ。「受忍論」は、国家の非常事態である戦争では、皆被害を受けたのだから、生命・身体・財産に何らかの被害を受けてもそれは受忍しなければならない、という論理であり、この論理のもと、戦後日本では多くの戦争被害者への補償が拒まれてきた。被団協は、「原爆被害に対しても受忍を強いる政府はふたたび国民を戦争にかりたてる」と主張し、「すべての原爆被害者に国家補償を」と求めてきた。 なお、日本政府が参加していない核禁止条約は、核の保有や使用を禁ずるだけの条約ではなく、被爆者の支援や核による環境汚染の回復も定める条約でもある(第6・7条)。この条約に背を向けることは、被爆者支援に背を向けることでもある。
コメンテータープロフィール
アメリカ政治・外交、国際関係論、平和研究。東京大学教養学部卒、同大大学院総合文化研究科で博士号取得(学術)。日本学術振興会特別研究員、早稲田大学助手、米国ハーバード大学、ジョンズホプキンズ大学研究員、関西外国語大学助教、高崎経済大学経済学部国際学科准教授を経て2022年より現職。著書に『戦争違法化運動の時代-「危機の20年」のアメリカ国際関係思想』(名古屋大学出版会、2014年)共訳・解説に『リベラリズムー失われた歴史と現在』(ヘレナ・ローゼンブラット著、青土社)。
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