解説今回のようないわゆる固定残業制度による労働時間削減の効果は低いです。固定残業相当の時間以上の残業が行われても追加で支払われる仕組みでないことも踏まえて考えると、労働時間管理が機能しにくく、限られた時間で生産性を高める意欲向上に繋がりにくいです。一方で、段階的に就業環境を改善していくための経過措置として目標とする残業時間相当分を固定で支払い、同時に働き方を変えていくための取組みにも着手しているのならば、目標設定と改革を同時並行で進めるという迅速な対応ともとれます。しかし、時間管理が機能しづらい制度のもとでは、変化の評価軸となり得る業務内容と労働時間の関係が見えにくく、上限のある定額制度を導入している時点で業務改善の意欲向上は見込めません。単に残業手当相当分を上乗せしたに過ぎず、労働時間削減と業務改善を促進することは難しいです。やはり制度そのものを見直す必要があります。
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コメンテータープロフィール
明治大学法学部卒業後、労働事務官として労働省へ入省し、個別労働関係紛争解決促進法の策定や国会対応業務、労働安全衛生総合研究所で研究員の給与計算業務等を経て、労働基準監督官に転官。厚生労働本省、労働保険審査会事務局、神奈川県相模原署、川崎南署、神奈川労働局労働保険徴収課勤務後、厚生労働省を退職。現在は各企業の顧問業務、法定教育、各種セミナー、安全パトロールを行っている。サッカー、フットサルの競技における運動器障害や大けがの経験を経て、運動指導に関わるトレーナーライセンスを取得。アスリートや企業で働く方など幅広い方を対象に、頭と動作を鍛え、機能改善、運動パフォーマンス向上へ導く運動指導を行う。
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