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木村元彦

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ジャーナリスト ノンフィクションライター

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見解水難事故で命を落とされた男性の遺族の方のコメントは、再発防止のためにメディアが果たすべき役割を正しく示唆している。類似のケースで夫を亡くされた女性を取材したことがあるが、犠牲者をマスコミに英雄視されることで、嘆き悲しむことすら、許されないと感じてしまうと吐露していた。貴重なコメントを受けて、亡き父のために自分はスケートをしていたわけではないと、声をあげた安藤美姫さんに心から賛辞を送りたい。記者会見に臨んで来た記者たちは、すでに物語を結実させた予定稿まで書いていたのではないか。遺族は悲しみを抱えながらも自身の人生を歩んでおり、ましてやスポーツ選手は、厳しいトレーニングを誰かのためではなく、己のために課している。書き手が、選手の思いを決めつけて、家族を背負う、国を背負うという安易なストーリーに駆け込むのは、フィギュアスケートを描き切る自信が無いからで、それを安藤さんは、看破していたと思われる。

コメンテータープロフィール

木村元彦

ジャーナリスト ノンフィクションライター

中央大学卒。代表作にサッカーと民族問題を巧みに織り交ぜたユーゴサッカー三部作。『誇り』、『悪者見参』、『オシムの言葉』。オシムの言葉は2005年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞、40万部のベストセラーとなった。他に『蹴る群れ』、『争うは本意ならねど』『徳は孤ならず』『橋を架ける者たち』など。

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