公設第一秘書が、選挙運動を行っていたことと、選挙運動収支報告書の支出欄に記載されている通りの報酬受領を認めているのであれば、公選法違反(買収罪)の成立は否定できない。公選法上は、法定の範囲で選管に事前に届け出た場合以外に選挙運動者に報酬支払を行うことはできない。これと同様のケースが、今年2月の長崎県知事選挙で当選した大石賢吾氏の選挙運動費用収支報告書に選挙コンサルタント会社J社への402万円余の「電話代」の名目での支出が記載されていることに関して、金銭支払が公選法違反(買収)に該当するとして、本記事でもコメントしている上脇博之神戸学院大学教授と私の連名で、大石陣営の出納責任者とJ社の代表のO氏を被告発人とする告発状を長崎地方検察庁に提出し、告発が受理されている件だ。選挙コンサル会社は「電話代」を支払う相手ではなく、一方でO氏は大石陣営の選挙運動を行っており、本件と同じ構図だ。
コメンテータープロフィール
1955年、島根県生まれ。東京大学理学部卒。東京地検特捜部、長崎地検次席検事、法務省法務総合研究所総括研究官などを経て、2006年に弁護士登録。08年、郷原総合コンプライアンス法律事務所開設。これまで、名城大学教授、関西大学客員教授、総務省顧問、日本郵政ガバナンス検証委員会委員長、総務省年金業務監視委員会委員長などを歴任。著書に『歪んだ法に壊される日本』(KADOKAWA)『単純化という病』(朝日新書)『告発の正義』『検察の正義』(ちくま新書)、『「法令遵守」が日本を滅ぼす』(新潮新書)、『思考停止社会─「遵守」に蝕まれる日本』(講談社現代新書)など多数。
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