「もしSNSがなかったら……“120%”こうはなってないと思います。ほんまにSNSの時代に生まれて、運がよかったなって」
読者モデル、オクヒラテツコ。“ぺこ”という呼び名のほうがしっくりくる人が多いかもしれない。Instagramは63万人、Twitterでは72万人以上ものフォロワーを抱え、女子中高生から圧倒的な支持を集めている。
ちょうど1年前、同じく読者モデルで彼氏のりゅうちぇると出演したバラエティ番組をきっかけに、活躍の場をお茶の間へと広げた。
ハイテンションなりゅうちぇるを見つめながら、「うふふっ」と笑っていたと思えば、「もう、ちゃんとしぃや!」なんてピシャリとツッコむことも。
「ほんま、ずっと『のんびり生きていくんだ』と思ってたんです。まさか、こうなるとは思っていなくて」
大阪、堺で“いいとこのお嬢さん”として生まれ育ってきた彼女が、東京の暮らしでも見失わなかったのは、「好きなもの」を信じる力だった。(取材・文 大矢幸世/Yahoo!ニュース編集部)
小さなころから「みんなと同じ」がイヤだった
“ぺこ”ことオクヒラテツコは、3人兄妹の末っ子として生まれた。11歳上の兄と、6歳上の姉と、歳の離れた甘えん坊は、めいっぱいの愛情を受けて育った。
幼稚園のころから“あゆ”のことが大好き。“ギャル”になりたくて、自分で選んだ洋服しか着なかった。サロンに行って、「あゆと同じに」と頼んで描いてもらうのは、ヒョウ柄のネイル。
「お母さんはあまりオシャレに興味がなくて、そこらへんをサンダルつっかけて歩いても平気なくらい。でも私が『やりたい』って言ったことは全部させてくれたんです」
姉の友人が出ていたバレエの発表会を見て、「やりたい」と飛びついた。かわいい服を着て、踊って、芝居をして。高2まで続けたクラシックバレエは「表現すること」の原点になった。
「みんなとおんなじ」に見られたくない、なんでみんな周りと同じで平気なんだろう……それが、ファッションにのめりこむ強い動機だった。小学校では、周りのポップな色づかいと対比するように、ナチュラルな“森ガール”。中学校では、みんながギャル系に身を包むなか、黒髪のマッシュボブにボーイッシュな古着を合わせた。そして高校に入り、周りがシックなファッションに落ち着きだすころ、彼女はまたその「逆」を行った。
「おうちには昔からバービー人形がいたんです。パープルとか蛍光グリーンとか……もともとバービーの色づかいが好きで、ガーリーなものもどんどん好きになっていって、その気持ちが爆発した感じでした」
90年代、アメリカのティーンたちが好んで着ていたような、ビビッドでスポーティ、それでいてガーリーな、いま多くのティーンを中心に支持される「ぺこりんファッション」が誕生したのだ。
「ちょっとイジワルな女の子」「今日はもっとポップに」……毎日テーマに沿って考えた、自分なりのスタイリング写真をブログにアップ。それがTwitter、InstagramとSNSの種類が増えるごとに、フォロワーも雪だるま式に増えていった。
2014年初めには雑誌『Zipper』のストリートスナップに掲載され、読者モデルとしてたびたび起用されるようになり、現在の所属事務所に声をかけられ、芸能界入りをすることになった。
SNSはありのままの自分を表現できる場所
2014年3月、住み慣れた大阪を離れ、東京へ上京することになった。それまで「アルバイトもしたことがなかった」という彼女は、読者モデル活動と並行して、アパレルショップに勤めることとなる。彼女の人気に注目したショップ側からの誘いだった。
「SNS上のやりとりで、私にも『ファン』と呼べるような子がいるんや、とは思ってたんですけど、それまで大阪にいたし、会う機会もなかったからピンと来なかったんです。でも私がお店に立つ日には、待ってくれてる子たちの行列ができたり、たくさん話したり、プレゼントをもらったり……ほんまビックリしたし、みんなよろこんでくれてるのがすごくうれしかったです」
そのアパレルショップで出会ったのが、先輩店員として働いていたりゅうちぇるだ。きっかけはぺこの“ひと目惚れ”だったが、はじめてのデートで出かけたテーマパークで、彼のほうから告白された。そのときプレゼントされたのは、プリンセスのティアラ。
「それまで、私が『かわいい!』って思うものを、『かわいいね』って言ってくれるひとはいなかったんです。『あぁ、あんたらしいなぁ』とか、『そういうの好きやなぁ』って言われるくらいで。でもその時りゅうちぇるがくれたものは、『なんで私がかわいい!って思うものがわかるん!?』みたいな。たぶん同じものを見て『かわいいね!』って言い合えるひとには、もう一生出会えへんと思います」
2015年9月、そのりゅうちぇるとともに出演した日本テレビ系『行列のできる法律相談所』以降、テレビ番組やイベントに引っ張りだことなった彼女だが、当初は戸惑いもあったという。
「今まで、自分が好きなもの、表現したいものを自分ひとりで考えて、自分の言葉でSNSで発信しつづけてきたから、『誰かの意見』を意識したことがなかったんです。番組にはたくさんの人が関わって、『こうしよう』『ああしよう』って考えていて……自分がどうすればいいかわからなくて、『何してんのやろ、自分』って焦ってました」
彼女にとっての基盤は、やはりSNS。そこでは何も隠さず、ウソをつかない。自分の好きなこと、やりたいことだけを表現できる場所なのだ。キレイな部分だけを切り取って、よりよく見せようとする「かわいさ」には、与しない。
「すごくかわいい場所に行って、写真を撮って、たまたまそのとき自分の脚が太く映っていたとしても、そんなの関係ない。『このすべてがかわいい! 好き!』って思うから、そのままSNSに載せるし、一切加工もしません。自分がどうのこうのというより前に、『好きなもの』を優先します」。その信念は、彼女が憧れる『ビバリーヒルズ高校白書』など90年代の海外ドラマの主人公たちのスタイルにつながる。「ちょっと陽に焼けてようが、二の腕が太かろうが、肌を露出して、あえて身体にフィットしたもの着て、すごく堂々としてる感じ。みんな自由で、めっちゃ陽気で……すごくかわいくて、あんなふうになれたらなって思うんです」
周りを気にするより、好きなことを追求したほうが楽しい
「今がいちばん楽しい」と笑う彼女。テレビでの立ち振る舞いにも慣れ、自分らしくいられるようになった。アパレルブランド「PECO CLUB」やりゅうちぇるとのコラボカフェ「CafeRyuPeco.com」(※いずれも期間限定)のプロデュースなど、「自分のやりたいこと」を自由にさせてもらっているからだという。けれどもこのご時世、「自分のやりたいこと」が明確にあり、好きなものを臆面なく「好き」と言う彼女の屈託のない明るさは、いささかまぶしくもうらやましく感じられる。そんな思いをこぼしたところ、彼女はこう答えた。
「私、面倒くさがりなんですよ。悩むのも面倒やから、結果的にめっちゃポジティブなんだと思います。好きなものを『好き』ということに対して、誰か何かいう人がおるなら、ネガティブな意見でも『あ、私に興味持ってくれてるんやな』って思う。でも、それを気にするくらいなら、自分の好きなことをもっと追求したほうがいいと思うんです。だって、もったいないもん」
現在、21歳。「好きなことをやりつくす」には、まだ時間がかかりそうだ。
オクヒラ テツコ(ぺこ)
1995年6月30日、大阪府生まれ。趣味はグロい映画を観ること。ちなみに特技は、「コロッケさんのする森進一さんのモノマネのモノマネ」と「美文字(硬筆8段・毛筆7段)」
編集協力:プレスラボ