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伊藤圭

「私は欲のままに生きるだけ」 芸人からカルチャーアイコンへ。渡辺直美の軌跡

2016/08/01(月) 10:44 配信

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2008年、ビヨンセのモノマネでブレークしたお笑い芸人の渡辺直美。彼女は今、芸人の枠を超えて多方面で活躍している。

その親しみやすいキャラクターと個性的なファッションが若い女性に圧倒的な支持を受けており、Instagramのフォロワー数はなんと日本一。

ファッションブランド「PUNYUS」のプロデュースも手がける彼女は、いまや1つのファッションアイコンとなりつつある。ただ、周囲の熱狂ぶりとは裏腹に、本人はいたって冷静だ。

「人気の理由? いや、分かんないです。私、自然体っていうか、欲のままに生きてるだけですから。食べたかったら食べるし、笑いたかったら笑うし。ご飯食べるし、タバコも吸うし、下ネタもしゃべるし。家事もできないし、ダメ人間なんですけどね。そんな人って女の人にはいちばん嫌われるじゃないですか」

何かと他人の目を気にしてしまいがちな多感な時期の女性たちにとって、その飾らない生き方こそが憧れの対象になっているのかもしれない。

そんな彼女が飛躍する大きなきっかけとなったのが、2014年のニューヨーク留学だった。(ライター・ラリー遠田/Yahoo!ニュース編集部)

撮影:伊藤圭

思い込みや偏見からの脱却、パフォーマンスは新境地へ

レギュラー出演していた『笑っていいとも!』が終了したタイミングで、仕事を休止して突然の渡米。3カ月間、ニューヨークでじっくりダンスや英会話を学んだ。ただ、そこで彼女が得た最も大きなものは、英語力やダンスの技術ではなかった。

「今までは、ものまねをやるときにも『見てる人が元ネタを知らなかったら意味ないな』って思うことが多かったんです。でもアメリカでは、街にいるパフォーマーとかテレビに出ている全然知らない人が何かやっていても、内容や見せ方が最高だったら最高なんですよ。そのことに気付いたら、私がちゃんと学んでパフォーマンスをやっていれば、元ネタを知らなくても盛り上がってくれるんじゃないかな、と思って。だから最近は、新しいことをどんどんやるようになりました」

撮影:伊藤圭

『東京ガールズコレクション』で最新のビヨンセネタを披露したり、日本初のぽっちゃり系ファッション専門誌『ラ・ファーファ』でイメージキャラクターを務めたり、活躍の場はどんどん広がっていく一方だ。ただ、彼女はもともと根っからのお笑い芸人。別の分野で仕事をすることに対して、最初は抵抗もあった。

「ファッション系とかアート系の人って、勝手に"イタい"んじゃないかと思ってたんですよ。お笑いのネタの中で、そういう人たちのことをディスったりすることもよくあったので。サブカルぶってんじゃねえよ、みたいな感覚があったんですよね。本当にひどい偏見なんですけど(笑)」

そんな彼女の偏見は、彼らと仕事を共にすることで払拭された。勝手に自分の中で作り上げていたイメージとは大きく乖離した、その素直さと真面目さにただただ驚いたという。

「ダンサーって、どうせテキーラばっかり飲んでただ踊ってるだけだろ、って思ってたんですよ。やたらとグータッチする、とか(笑)。でも、実際にはダンサーさんほど真面目な人はいない。普段から『がんばりましょう!』みたいな感じで前向きですし。結局、違う分野の人でも、エンターテインメントという向かってる目標は一緒じゃないですか。しゃべっていてもすごく楽しいし刺激を受けるんですよね。そうやっていろいろな人と仕事をすることで、芸人としての私が大きくなっていったらいいな、っていうのは感じます」

撮影:伊藤圭

初の個展開催「自分勝手な内容にしたくない」

今、彼女が「全力で取り組んでいる」と語るのが初の個展となる『渡辺直美展 Naomi's Party』だ。

彼女と親交の深いアートディレクターの吉田ユニがクリエイティブ・ディレクターを担当。写真や衣装の展示を中心に、渡辺の家に遊びに行ったかのような空間を再現するという。もちろん、渡辺自身も吉田やスタッフと何度も打ち合わせを重ねて、内容を練り上げている。

「自分勝手な内容になってしまうのがいちばん嫌だったんですよね。せっかく足を運んでくれた人たちに何か持って帰ってほしいんです。『なんだこれ!?』って感じさせるのもエンターテインメントだと思っているので。あと、気持ちだけじゃなくて、この個展でしか買えないものとか、手に入らないものとかもあって。とにかく来てくれた人に楽しく帰ってほしいなっていう思いを込めて、いろいろなことを考えました」

「欲のままに生きている」というが、渡辺は常に人一倍「どうすれば喜んでもらえるか」ということを考えている。だからこそ幅広い層に支持されるのだろう。彼女は自分自身を冷静に分析する。

「私ってあんまり、自分はこれが好き、これが得意、っていうタイプじゃないんですよ。だから、何をしたら喜んでくれるんだろうとか、そういうことを考えますね。私の固定ファンってそんなに多くないと思うんです。渡辺直美っていつでも見られるし、見たら楽しいって思うけど、別に写真を部屋に飾るほど好きではない、みたいな方が大半だと思うんですよ。だから、そういう人でも楽しめる内容にしたいんです。何かやってるらしいね、って興味本位で来た人が、これをきっかけにちょっとでも好きになってくれたらいいな、って思ってます」

撮影:伊藤圭


渡辺直美

NSC東京校の12期生として入学。ビヨンセのモノマネを披露し、一気に話題を集める。2008年には「笑っていいとも!」14代目いいとも青年隊として「いいとも少女隊」を結成。現在は、芸人としての活躍のかたわら、ファッションブランド「PUNYUS」も設立。映画・ドラマへの出演も積極的に行い、活動の幅を次々と広げている。

編集協力:プレスラボ

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