今祥雄

報道からお色気まで。1日1000万視聴のAbemaTV。ヒットの秘訣は「ネガティブな笑い」

2016/7/25(月) 14:13 配信

4月11日に開局したインターネットテレビ局、AbemaTVが高い支持を集めている。開局から1週間の段階で視聴数は1日に1000万超え。直近ではアプリダウンロードは600万を数える。

アニメ専門チャンネルや麻雀専門チャンネルなど、合計20チャンネル以上にも及ぶAbemaTVのコンテンツの中で、生放送中心のオリジナルバラエティに特化したチャンネルがAbemaSPECIALだ。AbemaSPECIALのチャンネルプロデューサーが長髪にハット、シルバーのネックレス、という独特な出で立ちの宮本博行氏だ。

若者のテレビ離れと言われるなかで、一体なぜこれほど高い人気を集めているのか。収録前のスタジオで宮本に秘密を聞いた。(Yahoo!ニュース編集部)

撮影:今祥雄

AbemaSPECIALが仕掛ける「ネガティブな笑い」

「Abemaでは地上波じゃできないことをやってみようとしているんです」。宮本はいたずらっぽくそう答える。

試しにAbemaTVスペシャルの番組を見てみよう。

AbemaSPECIALの目玉番組は深夜1時から放送の「The NIGHT」という帯番組だ。曜日ごとに異なるレギュラーが番組を担当する、トークバラエティ仕立てだ。独特なのはそのラインナップ。お笑い芸人のスピードワゴンやライムスター宇多丸といったトークバラエティと相性がいいパーソナリティに加え、ロックバンドのボーカル・清春や元モーニング娘。の矢口真里が受け持つ。

AbemaTV提供

The NIGHT以外でもでんぱ組.incの最上もが、読者モデルのりゅうちぇる、グラビアアイドルの篠崎愛がそれぞれ冠番組を持つなど、テレビの地上波ではなかなかお目にかかれない個性的なキャスティングだ。

だが「ただ僕が面白いと思うことをやりたいだけなんですよ、そしたらこういうラインナップになったという感じですね」。こともなげに答える。

宮本の思う“面白いこと”とは何か。

少し間を置いてこう答えた。

「んー……。“ネガティブな引っ掛かり”じゃないすかね。『なんだよ、これ(笑)!』とか、『ふざけんなよ(笑)!』、って思わせる番組が一番読者の心に刺さると思うんですよ」

例えば、「TKOの生でUFOを呼ぶ!!」ではタイトルどおり、ひたすらUFOを呼び出す様子を3時間生中継。結果的にはUFOの影も形も現れなかった。

また、別企画では渡辺直美がとにかく明るい安村とともに視聴者のコメントにしたがって、ゲリラ的に北海道のグルメスポットに出没。視聴者のコメントに従ってグルメスポットをめぐる企画では、あまりの無計画ぶりに視聴者がゆく先々で画面に乱入し、すすきのの街が大混乱に陥った。

AbemaTV提供

AbemaSPECIALのもう一つの”攻め”が「エロ」だ。番組ではセクシー女優たちが脱衣麻雀をしたり、オトコのエロ妄想を熱く語り合う「妄想マンデー」などの”お色気バラエティ”が存在する。

こうした地上波ではできない“攻めた”姿勢が受けた。ネットに親和性の高い20~30代の視聴者を中心にアプリダウンロード数は600万を数える。

「でも今、そういうことを地上波でやると、なかなかやりにくい。例えば生放送で3時間なんて言うと台本も分厚くなるし、リハーサルも何回も何回もやらないといけない」

宮本は「絶対UFO来ると思ってたのに、おかしいなぁ」とぼやくが、今の地上波3時間の生放送でUFOを呼ぼうとした結果、「何も起きませんでした」では苦情の電話が鳴り止まないだろう。生放送中に視聴者が乱入する様子は今のテレビではなかなか考えられない。エロなど言語道断だ。

「今のテレビ番組の作り方って“いかに視聴者にネガティブな感情を持たせないようにつくるか”ってことを意識していると思うんです」

かつての地上波放送にはUFO検証番組やちょっとしたお色気、エロ番組があった。「教育上よろしくない」という理由で姿を消してしまったが、新聞のラテ欄には硬派な報道番組と現実離れした“はちゃめちゃな番組”が確かに同居していたのだ。

「もしかしたら、地上波で矢口さんの冠番組はなかなか難しいかもしれない。やっぱり、反感を持つ人はいると思いますから。だけどこの番組は免許制の地上波番組と違ってネットの一つサービスですから。それに感想も苦情もAbemaTVのコメント欄にリアルタイムで書き込まれていきますから」。

何が起きるかわからない生放送で次々と“ネガティブな笑い”を仕掛けていく宮本。こうした自らの番組を「“予定不調和”な番組作り」と語る。

撮影:今祥雄

ロンハー、アメトークの加地倫三氏の下で学ぶ

「面白いこと」を求めて愚直に“攻め”の番組作りを続けるAbemaTVスペシャル。宮本のバラエティ魂のルーツは「アメトーク」や「ロンドンハーツ」を手がけた名物プロデューサー・加地倫三氏にある。

「加地さんの番組作りから学んだものは大きいっすね。加地さんはもともと生放送のスポーツ番組をやっていた人です。だからバラエティでも時間ギリギリまでこだわって作りこむし、現場での対応も早い。バラエティづくりの基本を学びました」

宮本が加地の下で「ロンドンハーツ」を作っていたときは『ブラックメール』などの素人ドッキリ企画などを行っていた。「ターゲットの尾行とかもしましたね。一人のターゲットを2、3週間も尾行したり(笑)。とにかく体力勝負で」

AbemaTVの開局で、テレビの作り手がインターネットへ移り始めた。その先駆者として宮本は何を仕掛けていくのか。

「インターネットテレビっていうと既存の動画サービス、ネット動画コンテンツにあるような、カメラは定点で置いて、何かむちゃくちゃなことをやって視聴数を取る、みたいなことを考えがち。でも僕はそういう番組づくりをしたくない。やっぱりテレビのノウハウを取り入れながら、ネットでできることを探したいんです」。

そう語る宮本の顔は、少年時代にテレビをかじりつくように見ていたテレビっ子のままだ。

撮影:今祥雄


宮本博行

(みやもと・ひろゆき AbemaTV ジェネラルプロデューサー)
2002年にテレビ朝日へ入社。同局にて「虎の門」「ロンドンハーツ」
「さきっちょ」「バナナTV」「テレ朝動画」などに携わる。2015年、Abema TVのジェネラルプロデューサーに就任(テレビ朝日 総合ビジネス局所属)Abema TVでは「AbemaSPECIAL」チャンネルで放送する生放送番組の責任者、プロデュースを担当。

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