葛西亜理沙

道の駅で夜を明かす――彼らはなぜ「車中生活者」になったのか

2/15(土) 8:28 配信

私たちの身近にある「道の駅」。日中は多くの人でにぎわう憩いの場だが、夜になると別の顔を見せる。駐車場の片隅で目立つのは、ガラスに目隠しをした車。その多くはレジャー目的だが、なかには長期にわたり、道の駅の駐車場を転々とする「車中生活者」がいる。それぞれに異なる深刻な事情を抱えた彼らは、今日も狭い車内で眠りにつく。社会から離れ、遠ざかるように暮らす車中生活者たち――。彼らの姿は、社会に何を問いかけるのか。半年にわたって取材した。(取材・文:NHKスペシャル“車中の人々 駐車場の片隅で”取材班/編集:Yahoo!ニュース 特集編集部)

取材のきっかけは、昨年夏。群馬県で暮らしていたある女性の死だった。

「3世代 1年車上生活か」

女性は娘と孫の3人で、1年にわたって軽乗用車の中で暮らしていた。軽乗用車をどこに止めていたのか。家族の足取りを追っていくうち、居場所の一つとして浮上したのが、埼玉県内の道の駅だった。取材を続けていくとあることに気づいた。

深夜の道の駅(提供:NHKスペシャル)

全国29%の道の駅で

売店や食堂の営業が終了した深夜。閑散とし始めた道の駅の駐車場に、長距離トラックやキャンピングカーなど何台かの車が止まっていた。ここまではいつもと同じ景色だが、しばらく眺めていると、明らかに様子の違う車がいることがわかる。

その見た目は似ている。後部座席に日用品が満載されている。またフロントガラスは目隠しで覆われ、外から見えないようになっていることが多い。

数週間にわたって取材を続けていくと、こうした車は1台や2台ではないことがわかってきた。この道の駅では、多い日で1日10台近い車が夜を明かしていた。道の駅の職員はこう話した。

「どんな生活をしているのか、なぜ車で暮らしているのかはわかりません。ただ、道の駅で働く私たちにとっては、珍しい存在ではありません」

日中の道の駅(提供:NHKスペシャル)

レジャー目的で車中泊している車の場合、トイレの近くや、夜でも比較的明るい場所に止まっている。しかし車中生活者の車は、駐車場の隅っこや店舗から少し離れた第2駐車場などに止まっていることが多い。日中はショッピングモールや公園などで過ごし、夜になると車を止めに来るという。

車中生活者はいったいどれだけいるのか。日本全国に1160ヵ所ある道の駅すべてに取材すると、335ヵ所、全体で29%の道の駅から「車中生活者とみられる人がいた」という回答が戻ってきた。

(提供:NHKスペシャル)

彼らはなぜ、車中生活を選ぶのか。ここに至るまで、どんな生活を送ってきたのか。それを知るための車中生活者への取材は容易ではなかった。

一度ドアを開けても、「関係ないだろう!」と再び閉め切ってしまう人がいた。毎晩、駐車場で夜を明かしているのを確認したうえで話しかけても、「泊まってなんかいない」と答える人もいた。

そんななかでも、話を聞かせてくれる車中生活者がいた。

群馬県の道の駅で66歳の男性と出会った。何度も通ううちに、男性は口を開いてくれた。

「ここで生活して、1年近くになるかな」

人目を忍んでいるのか、男性の軽乗用車は店舗からもっとも離れた場所に止められていた。ドアを開け、車内を見せてくれた。内部は整理整頓されていて、「寝室兼リビング」にあたる後部座席には座椅子があり、寝袋もあった。男性は「足を伸ばして寝ることはできないね」と言った。最後部の荷台部分には、カセットコンロや鍋、調味料などが置かれている。米を炊くこともあれば、スーパーで買ってきたラーメンを煮炊きし、自炊をすることもあるという。

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