2012年4月に日銀が物価安定の目途を置いた真相とは
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日銀は7月29日に2012年1~6月に開いた金融政策決定会合の議事録を公表した。
2012年2月14日の金融政策決定会合では、中長期的に持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率として「中長期的な物価安定の目途」を示すことにすることを決定した。
「中長期的な物価安定の目途」とは、消費者物価指数の前年比上昇率で2%以下のプラス領域にあるとある程度幅を持って示すこととした。その上で、「当面は1%を目途(Goal)」として、金融政策運営において目指す物価上昇率を明確にした。
2012年2月14日の金融政策決定会合の議事録のなかで、当時の白川総裁は下記のような発言をしていた。
「政策姿勢の明確化というテーマで、取り敢えず今申し上げたが、これはある意味で、中央銀行の行う金融政策をどういう原理で行っていくのかという、ある種中央銀行にとって──ややオーバーな言葉かもしれないが──憲法のようなものであって、非常に大きな話である。非常に大きな問題を議論しているという認識のもとに、これは議論した方が良いと思っている」
具体的な数字を出して、それに向けて金融政策を行うことは、いわば憲法のようなものを制定しそれに縛られるということになる。白川総裁(当時)はそれがいろいろな弊害を生みかねないとして懸念を示したとの見方もできよう。
物価目標の数字に関して西村副総裁(当時)が下記のように発言していた。
「最近Fedが彼等のデュアル・マンデートと整合的なロンガーラン・ゴールとしてPCEデフレーターで2%と明示し、欧州中央銀行も長期の目標としてHICPの――2%以下だが――2%に近いと明示していることは、十分に考慮しなければならないと思う。長期の正常状態を想定する時、主要国の多くが共通の物価上昇率を目指しているならば、それと同じ上昇率を目指す必要がある」
2012年1月25日のFOMCで、FRBは物価に対して特定の長期的な目標(ゴール)を置くこととし、それをPCEの物価指数(PCEデフレーター)の2%とした。2月14日の日銀のバレンタイン緩和はこれによる影響が大きかったことも事実であろう。
2012年2月10日の読売新聞に、与党内での日銀への追加緩和圧力が強まっていると報じられていた。9日の衆院予算委員会で野田総理(当時)は、名目3%、実質2%という成長率目標の達成に向けて、日銀と問題意識を固く共有していきたいと述べた。
米国が2%というインフレ目標を置いたことで、欧米の中銀の目標とされる数字と乖離している点なども指摘されていた。物価安定の理解などに対しては、わかりやすさを重視するためにもうひと工夫するなどの対応を行うのではとの見方も出ていた。