J1昇格・東京Vの最年長、奈良輪雄太。身近なヒーローが教えてくれた「応援される」ために必要なこと。
「もう本当にハラハラしましたし、ピッチの外からあれだけ感情移入するような試合を経験したのは初めてかもしれないです。正直、引退は近いと思っていて。一瞬でこれだけの感動ができることは引退後、この先の人生でないと思います。この時間を本当に大切したいと常に思っていますし、自分がこれから先何年生きていくかわからないですけど、最期死ぬ時にこの経験をフラッシュバックで思い出すぐらいのインパクトのある日になりました」
どんな時でも常に沈着冷静で真のプロフェッショナルな東京ヴェルディのDF奈良輪雄太が珍しく、J1昇格を決めた後のミックスゾーンで高揚感溢れる心情を口にした。
奈良輪パパが「選手」になった日。僕たちはまた1%の彼を応援しに行く。30年目のJリーグの日常と可能性
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/5cb7861897d14909d6d476a10328d2f04d18fda1
今年3月にサッカー少年団で東京Vの試合応援に行って以降、奈良輪パパは「Jリーガー」「プロサッカー選手」となり、多くの家族にとって東京ヴェルディが「推しチーム」となった。今回のJ1昇格プレーオフ準決勝、決勝も少年団の希望者を全員招待してくれた。
「自分も初めてJリーグを見に行った時、感動したのをはっきりと覚えていますし、そういう経験をできるだけ早い段階で(少年団の)子どもたちにもさせてあげたいと常日頃思っています。ずっと夢に思い描いていたサッカー選手が、年を重ねるごとに目標に変わり、それを実現したという僕の成功体験を子どもたちに少しでも還元できるようなことができればいいなと。それが今日少しできたのかなと思います」
土日にある少年団の練習に時間があればふらっと顔を出してくれる気さくで人当たりのいい奈良輪パパだが、改めてJ1昇格プレーオフの大舞台ではキラキラと輝いていた。決勝での出場はなかったが国立競技場で5万人以上の観客を前にプレーするJリーガーとして遠い存在になっていた。
「サッカー選手も別に普通の人間なので。決して遠い存在ではないということは、何となく子どもたちにわかってもらえたらいいかなと。少年団でも練習を見ているだけじゃなくて、できるだけ参加して子どもたちに何かを感じてもらえたらいいなということは常に思っています」
沢山の人に応援される選手、チーム。
プロの世界では上手さ、強さよりも「どれだけの人に応援され、愛されるか」が重要だ。チケットを買って、土日の休みにスタジアムまで足を運ぶ。応援されるということはリアルに他者の心と体が動くのだ。
SNSのフォロワー、数字では表せない価値がある。
「やっぱり結婚して、家族ができて、息子がサッカーを始めた少年団で本当にいろんな人に応援してもらえるし、近くに住んでいる人たちから『頑張って』とよく声をかけられるようになりました。人との繋がりを本当にここ数年強く感じています。そういった人たちのために、感謝の気持ちをしっかりと表現できればいいなと思ってプレーしています」
そんな奈良輪が一番感謝の気持ちを表現したいのが家族、特に奥様だ。準決勝、決勝の試合後は共に感極まって涙した奥さんの様子を伝えたところ、こんな話をしてくれた。
「彼女は僕より感情的になるタイプなので。日頃からあまり言葉にはしていないですけど、実は僕サッカーノートを書いていて。中学生から始めてプロになってからもずっと続けてるんですけど、そのノートにはサッカーのことだけじゃなく、妻に対する感謝の気持ちだったり、子どもたちへの想いも書いていて、ついこの前そんなことを書いていたんです」
「やっぱり僕は、自分の家族が喜ぶ姿を想像してピッチに立っているので。今日、スタンドで泣いていたと聞いて、何て言ったらいいかな……。難しいな……。感謝の気持ちは少し表現できたのかなと思います」
J1昇格プレーオフ決勝の応援に駆けつけたわれわれに、夢と感動を与えてくれた奈良輪パパは最高にカッコよかった。本当にみんなで声を枯らすまで応援した。
パパとしてプロサッカー選手として多くのものを与えてくれる奈良輪雄太「選手」から、人に応援される、人に愛されるために必要なことを教えてもらった気がする。
ありがとう、J1昇格おめでとう、僕らのヒーロー 奈良輪雄太。