日銀の物価目標とは何なのか
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日本銀行法には「日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする」とある。
2013年1月22日に、従来は「中長期的な物価安定の目途」として、「消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域、当面は1%を目途」としていた。今回、「目途」から「目標」という表現に代えたうえで、その目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とした。
同日に出された政府と日銀の共同文書には下記のようにあった。
「日本銀行は、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取組の進展に伴い持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識している。この認識に立って、日本銀行は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とする」
消費者物価指数については「総合」なのか「除く生鮮食料品」なのかはっきりしていなかったが、当初は「総合」であり、その後「除く生鮮食料品」とした。
日銀は2%という物価目標を設定した。この場合の物価は全国消費者物価指数(除く生鮮食料品)の前年同月比の数字ということになる。
日銀金融政策決定会合における公表文には以下のように記載されている。
「日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する」
全国消費者物価指数(除く生鮮)の前年同月比は、2022年4月に2.1%増と2%を超えて以来、直近発表された2023年2月の同3.1%まで11か月連続で「物価目標」の「2%」を超えてきている。
2%の「物価安定の目標」はすでに実現しており、11か月連続で超えている。今後日銀は再び2%を割り込むと予想しているようだが、あくまでそれは予想というか希望的観測でしかない。
日銀は今回の物価上昇をエネルギー価格や原材料費の高騰によるコストプッシュ型だとしている。確かに「財」による影響は大きかった。しかし、じわりと「サービス」も上昇し、2%に接近し、超えてこようとしている。物価を巡る状況は様変わりしている。
それ以前に日銀の物価目標にも共同文書にも記載されているのは「消費者物価指数」であり、賃金などでは決してない。実質的にその数値が達成されているにもかかわらず、どうして「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続しているのか。これは金融を学習している子供達にどう説明するのか。
そもそも物価に見合った金利を形成させないということはどういうことなのか。日銀はこのあたりしっかり説明してほしいと思う。