旧統一教会側への過料10万円が決定 たかが10万、されど10万 解散命令の司法判断に向けた重要な一歩
東京地方裁判所は、旧統一教会・田中冨広会長への過料10万円を決定しました。たかが10万円かもしれませんが、されど10万円の重みになる司法判断とみています。
旧統一教会に対して初の行政罰の判断が下された
文部科学省は旧統一教会に対して、令和4年11月から令和5年7月までの間に7回にわたる質問権(以下報告徴収)を行使しました。しかし教団側が報告を求められた事項の一部について報告しなかったことから、東京地方裁判所に「過料」を科す申し立てをします。
3月26日、東京地方裁判所から過料10万円の決定がでました。これにより、旧統一教会に対して初の行政罰の決定が出されたことになります。
ちょうど立憲民主党を中心とする野党による統一教会問題の国対ヒアリングが行われているさなかに、過料決定の報道が飛び込んできました。
文部科学省の担当者は、同党の山井和則議員からの過料に関する質問を受けて「過料の決定が下ったという報告は受けています」としたうえで、決定文自体はまだ見ていないとしながらも、次のように話します。
「我々として適法な報告、聴取、質問権の行使であったということが認められたとすれば、正しい決定が下されたことになるのかと思います。今後も引き続き、解散命令に向けて全力をあげていきたい」
この過料10万円は、巨額な資金を持つ教団にとって、取るに足らない小さな金額かもしれませんが、次の歩みに大きくつながるものです。なぜなら、決定要旨のなかに、現在、文部科学省が行っている解散命令請求につながってくるだろう内容をみたからです。
報告徴収自体が違法との教団側の主張に対して
旧統一教会側は文科省の過料の申し立てについて「報告徴収自体が違法であるから」「報告を拒否したことは正当である」などと陳述していました。しかし東京地裁は決定文のなかで、旧統一教会への「報告徴収の手続について、違法の廉(かど)はうかがわれない」としており、教団側の主張を退けています。
また、宗教法人法81条1項1号に該当する事由のある疑いの有無についても「文理上、同号の法令の範囲から、民法ないし同法における不法行為に係る規定が当然に除外されているということはできない」として、民法上の不法行為は、同法81条1項1号の法令違反行為に含まれるともしており、過料の決定になっています。
決定文では22件の民事裁判についても言及
通知決定では、旧統一教会に対して違法と判断された22件の民事裁判についても言及しています。
「信者らによる献金勧誘等行為について不法行為が認定されており、22件の民事判決で認定された事実関係によれば、全国各地において長期間にわたり、多数の被害者らに対し、その財産権や人格権を侵害する違法な行為が繰り返されていたとされており、22件の民事判決で認容された被害者らの損害額の総額が15億円超に上っている」としたうえで「法令違反行為をしたとの疑い(報告徴収の端緒としての『疑い』の意味)があったと認められる」としています。
また「被害に遭った者すべてが訴訟を提起するとは考え難いことからすれば、22件の民事判決で被害者とされた者のほかにも、(旧統一教会の)信者から同様の被害に遭った者が少なからずいることが推認される」としています。
それゆえに「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をした」(宗教法人法81条1項1号)との事由がある疑いがあったと認められるとしています。
小括として、旧統一教会に対して「報告徴収を実施したことは同法78条の2の要件を満たす適法なものであった」としています。
元信者・被害者家族らの声が積み重ねられて生まれた結果
こうした判断をしたうえでの10万円の過料決定は、しっかりと旧統一教会による被害の実情をみた重みのあるものといえます。
この決定文で述べられている22件の民事訴訟の1件には、1999年に筆者が元信者らとともに起こした裁判(2004年に最高裁で勝訴判決確定)もありますが、当時は社会全体が教団による被害への危機意識もなく、未証伝道(教団名を隠した布教)などにより、教団の勢いが増しているなかではありましたが、弁護士を始めとして多くの方々の力を得て、勝訴判決を勝ち得たことは本当によかったと思っています。何事も積み重ねのなかで、ことはなし遂げられていくことを強く思います。
今回の過料の決定は元信者の目線からみても、ぐっと旧統一教会の解散命令への司法判断に近づくようなものになっているように感じています。