短時間労働者の平均時給を都道府県で比較してみよう
一般労働者同様に短時間労働者(パートやアルバイト)の時給もまた、労働内容や成果、就業業態など多種多様な条件によって違いが生じる。その一要素として地域別の差異がある。厚生労働省が2017年2月に発表した、賃金関連の情報を調査集積した結果「賃金構造基本統計調査」の最新版の公開値を元に、その実情を確認する。
「短時間労働者」の仕切り分けは今調査においては「同一事業所の一般の労働者より1日の所定労働時間が短い、あるいは1日の所定労働時間が同じでも、1週の所定労働日数が少ない労働者」と定義されている。例えば「就業日はフルタイム出勤。しかし出勤日は月水金のみ」「就業日は一般労働者と同じ平日すべて。しかし午前中は休みで午後のみの出勤」の場合は今件の「短時間労働者」に該当する。また契約社員の大部分は正社員と同じ時間帯で働くことから「一般労働者」に該当し、今回の「短時間労働者」には該当しない。
早速ではあるが次に示すのは、男女それぞれの短時間労働者における平均時給の地域別動向。企業規模別で差異が大きく生じ得るため、今回は企業規模10人以上の事例に限定した(各種公開値もこの区分の方が多い)。
産業種類によって時給は大きく異なるため、高い時給を支払う産業が多い地域ほど高めの値をつけることになる。無論地域の物価や労働市場なども加味される。そのため今回の各値はあくまでも指標レベルのものと見るのが無難。
男女別に見ると、男性の最大値は東京の1309円。次いで茨城や大阪などで1200円台をつけている。東京近辺の関東地域を筆頭に、近畿圏など人口密度の高い地域で、やや高めの値が出ているように見受けられる。他方、低い地域は沖縄の858円、秋田の943円など。
女性では最大値がやはり東京の1236円だが、神奈川の1163円が続く。男性よりも関東・近畿圏の高値傾向がはっきりと表れており興味深い。最安値は山形の875円。
一方、「厚生労働省の最低賃金制度に関する公式ページ「労働基準 > 賃金 > 最低賃金制度」」で確認してほしいが、最低賃金法では都道府県別・産業別で時給単位の最低賃金を法的に定めている。例えば東京都の場合は時給932円(2016年10月時点)となっている。
そこでこの最低賃金と、平均賃金の差を算出したのが次のグラフ。多分に数字遊びの感はあるが、どれだけ法的最低基準から賃金が上乗せされているのか、その目安となる。
男性では茨城や徳島の上乗せ額が群を抜いている。前年2015年では福島や茨城の上乗せ額が群を抜いており、「震災周りの短時間労働者に絡んだ需給関係で、人材確保のための結果が数字となって表れているのだろうか」としたが、その状況は茨城ではまだ続いている感はある。あるいは震災後の復興とは関係なく、純粋に開発そのものが底上げされているのかもしれない(新築の住宅建設動向でも近郊部での活性化が確認できる)。それ以外では四国・中国地方の一部地域、愛知周辺、中部日本海側でやや高め。
他方女性では東京が群を抜き、ほぼ同額で茨城が並んでいる。茨城は活力のあるエリアにも見える。それ以外は特に地域別傾向は見出しにくい。
さらに数字遊びとなるが、男女に仕切り分けしたこともあり、男女間の短時間労働者における平均賃金の差を倍率で算出してみる。例えば全国なら1.08とあるので、平均額で男性は女性の8%増しの金額となる。
大よそ1割から2割増しの結果が出ているが、興味深いことに神奈川と沖縄では1.00未満、つまり男性よりも女性の方が平均時給が高い結果が出ている。産業構造によるものか、あるいは他に社会環境的な原因があるのかまでは確認ができないが、興味をそそられる動きには違いない。
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