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年金への想いは昔も今も変わらない

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 高齢者比率の増大に伴い現役世代の負担は増えていくが……

単身世帯では6割が「年金だけではツラい」

日本の公的年金は自身の積立資金を用いる積立方式では無く、世代間で扶養のやり取りをする賦課方式が行われている。その年金で老後の日常生活をまかなうことはできるのか。個々の思いの実情を、金融広報中央委員会の「知るぽると」が毎年調査・結果の公開をしている、「家計の金融行動に関する世論調査」の公開値から確認していく。

まずは年金支給額について、その額(公的年金に加えて企業年金も含め、個人年金は除く。以下同)だけで老後の生活を営めるか否かを尋ねた結果が次のグラフ。単身世帯と二人以上世帯でそれぞれ区分して集計してある。

↑ 年金に対する考え方(単身世帯)
↑ 年金に対する考え方(単身世帯)
↑ 年金に対する考え方(二人以上世帯)
↑ 年金に対する考え方(二人以上世帯)

二人以上世帯で2001年に大きな変化が生じているが、これは同年から「日常生活費程度もまかなうのが難しい」の選択肢部分を変更したため。元々はより緩やかな生活をイメージさせる「年金だけではゆとりがない」だったため(「ゆとりはないが、日常生活費程度はまかなえる」とまぎらわしいのが変更の理由だろう)、表現の変更により回答率に変化が生じる次第となった。

経年動向を見ると、昔から直近まで、年金と老後生活の金銭的な関係において、考え方に大きな差は生じていないことが分かる。あえていえば二人以上世帯では「不自由なく暮らせる」が微減、単身世帯では微増しているぐらいが、中長期的な変化といえるだろうか。少なくとも今調査に限れば、公的年金も含めた年金受給額に関する心境は、昨日今日に騒がれ出した問題ではないことが分かる。

受給開始年数引き上げへの懸念

公的年金だけで老後の生活をまかなえるか否かについて、「ゆとりはないが、日常生活費程度はまかなえる」「日常生活費程度もまかなうのが難しい」、要は「ゆとりが無い」とする回答者に、なぜ「ゆとりがない」と考えているのか、その理由を選択肢の中から2つまで選んでもらった。その結果の直近年分及び推移をグラフ化したのが次の図となる。

↑ 年金ではゆとりがないと考える理由(2016年)(ゆとりが無い世帯)(2つまでの複数回答)
↑ 年金ではゆとりがないと考える理由(2016年)(ゆとりが無い世帯)(2つまでの複数回答)
↑ 年金ではゆとりがないと考える理由(単身世帯)(ゆとりが無い世帯)(2つまでの複数回答)
↑ 年金ではゆとりがないと考える理由(単身世帯)(ゆとりが無い世帯)(2つまでの複数回答)
↑ 年金ではゆとりがないと考える理由(二人以上世帯)(ゆとりが無い世帯)(2つまでの複数回答)
↑ 年金ではゆとりがないと考える理由(二人以上世帯)(ゆとりが無い世帯)(2つまでの複数回答)

まず直近年分。いずれの具体的項目でも単身世帯の方が回答値が高い。「2つまでの複数回答」であり単純な複数回答では無い以上、すべての回答者が2つの回答をしていれば、どちらかの種類世帯のみが多いことは生じ得ないのだが、実際にはこのような形になった。

回答数平均値を見ても、単身世帯では1.75個なのに対し、二人以上世帯では1.48個に留まっている。それだけ単身世帯の方が、ゆとりが無い世帯における不安要素が多岐に渡っている。もっとも理由の順位に差異はほとんど無く、悩みの中身は大きな違いは無い。両種類世帯とも、最大の要因は「年金が支給される金額が引下げられる」とするもの。

経年変化でも、単身・二人以上世帯共に「支給金額の減額」を懸念する声がもっとも大きいことに違いは無い。また、以前は「高齢者への医療費用の個人負担が増える」ことを心配する人が多かったが、少しずつ減少している。他方、「高齢者への介護費用の個人負担が増える」との回答が増加している。つまり医療から介護へと、心配事の対象がシフトしつつあると見ればよいのだろう。

このグラフ、状況の推移動向からは、「いくらもらえるか」「いつからもらえるか」この2点における懸念が、年金生活における不安を底上げしている現状がつかみ取れる。現実問題として支給金額の減額や、支給開始年齢の引上げが起きていることから、それらへの心配が増すのも道理ではある。

なお今件調査は「2つまでの複数回答」であり、値が低い要件に関する懸念が無いわけでは無い。例えば医療費用の負担増加や支給年齢の引き上げに対する回答率は減少しているが、それらに対する懸念が鎮静化しつつあるのではなく、相対的に優先順位が下がっているだけの話でしかない。その点には注意をしてほしい。

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グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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