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北朝鮮はなぜ「新兵器」を続々と作り出せるのか

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
北朝鮮が昨年公開した新型対艦ミサイルとステルス艇

北朝鮮は今年に入り、すでに3種類の新型兵器――対戦車誘導ミサイルと大口径多連装ロケット、地対空ミサイル――の試射を公表し、その性能を誇示した。これらのうち、とくに多連装ロケットと地対空ミサイルの開発・配備動向については、韓国軍も緊張感を持って見守っている。

これらが、その原型になったと思われる中国製やロシア製の兵器と近い性能を備えている場合、米韓軍にとって侮れない脅威になるためだ。

また、北朝鮮は昨年にも、新型の対艦ミサイルとステルス艇を披露し、韓国軍を驚かせた。韓国軍はこのミサイルについて、ロシア製の「3M24ウラン」と同等であると分析しているようだ。それが当たっているとすれば、従来の「KN-01」(北朝鮮版シルクワーム)の射程を50kmも上回るほか、超低空を飛行するためレーダーによる探知も難しくなる。

(参考記事:北朝鮮の「新型ミサイル」「ステルス艇」に不吉な予感

それにしても、強力な経済制裁下に置かれてきた北朝鮮が、どうしてこうも次から次へと新兵器を作り出せるのか。

この点について、ジャーナリストの李策氏が興味深い指摘をしている。「かつて、ベトナム戦争や中東戦争に直接参戦し、その後も世界各地の戦場に兵器を売り込んできた北朝鮮は、現場からのフィードバックを得つつローテクからハイテクへと段階的に技術を高めていく、独自のノウハウを持っているのではないか」というのだ。

とくに中東の国々は、北朝鮮の主要な武器の輸出先として知られているが、それと同時に、ロシアなどから輸入した新型兵器を北朝鮮に提供し、複製をサポートしてきた事実が知られている。

(参考記事:北朝鮮の弾道ミサイル開発は空軍のエジプト派遣から始まった

北朝鮮が中東やアフリカに張りめぐらせた武器取引ネットワークは、単に商品を売るだけでなく、新兵器開発においても大きな役割を果たしてきた可能性がある。

もちろん、米国や韓国もそのことには気づいているだろう。米国はすでに、エジプトやシリアに駐在する北朝鮮の武器商人らを重点的に制裁対象に加えている。

ただ、北朝鮮の武器取引や兵器開発に関わってきた国々は、確信犯的に国連制裁を無視している。米国などの取り組みがどの程度の効果を上げるかは、未知数と言わざるを得ない。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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