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「ロックダウンで食料がなくて……」新年の寂しい食卓を嘆く中国・西安市民の声

中島恵ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

中国内陸部の大都市、西安市の市民から「食料が足りない……」という悲鳴にも似た声が挙がっている。昨年12月上旬からの3週間で、新型コロナウイルスの感染者が1000人を超えた同市が、12月23日からロックダウンに踏み切ったからだ。

当初の数日間は、2日に1回だけ食料品の買い出しが許可されていたが、それもできなくなってから約1週間――。新年を迎えた現地の人々はどのように暮らしているのか?

当初は買い出しが許可されたが……

ロックダウンが開始された直後、筆者は西安在住の中国人の知人に連絡を取ってみた。

その人によれば「(ロックダウン前夜の)22日のスーパーは大混雑していましたが、それ以外はとくに困ったことはありません。我が家には大型の冷凍庫があるので、食材に困ることはありませんよ」という話で、案外余裕があるようだった。

中国西安市でロックダウン 人口1300万人の大都市で何が起きているのか?

しかし、12月28日頃になると、状況は一変する。

多くの西安市民がSNSに「ネットで注文した食料品が届かない!」「(注文したのに)欠品が多いじゃないか」「食料品が買えなくて飢え死にしそうだ」などと不満や苦情を書き込んだからだ。

食料は残りわずかという西安市民も多い(筆者の友人提供)
食料は残りわずかという西安市民も多い(筆者の友人提供)

その時点では、筆者の知人宅では困っている様子はなく、大みそかの夜にも、自宅から一歩も出られない人々がマンションの窓を開けて「新年おめでとう」などと大声で叫び合っている動画を投稿しているだけだった。

だが、元旦になると、「友人や親戚の家では食料が足りないみたい……。食料を分けてあげたいが、うちもいつ底をつくかわからんないし、分けてあげたくても家から一歩も出られないので……」と話していた。

そして、SNSに親戚宅のほぼ空っぽの冷蔵庫や、残り少ない野菜の写真を載せていた。多くの家庭で、このような危機的な状況に陥ってしまい、わずかな食材を料理して暮らしていた。

ほぼ空っぽの冷蔵庫(筆者の友人提供)
ほぼ空っぽの冷蔵庫(筆者の友人提供)

行政が無料で食料配給を行う

西安市は人手不足と物流の問題により、食料品など必需品の供給が大幅に滞っていることを認めた。

市の幹部は記者会見で「企業を動員して、ただちに、地域ごとに食料の無料配給を行う」と発表。人民網は「1世帯当たり5種類以上の野菜を10キロほど配布する予定」と報道した。

地元のニュースサイトを見ると、スーパーの担当者や「社区」と呼ばれる地域の担当者などが協力して、野菜や肉、卵などを各地区に振り分け、それをさらに団地ごとに分けて袋詰めする作業を行っており、それを実況中継しているメディアもあった。

マンション前に積まれた配給の食料(中国メディア「第一新聞」より筆者引用)
マンション前に積まれた配給の食料(中国メディア「第一新聞」より筆者引用)

1月2日になり、筆者の知人も「新年だからやはり肉を食べたい。政府配給の野菜もやっと到着した。やっと新年を迎えられた気分だ。よかった、よかった」と話していた。

中国のお正月は「春節」なのでまだ先だが、昨今は西洋式に1月1日を祝う人も増えており、中国も休暇中だったことから、あまりにも寂しすぎる食卓を残念に思っていたのだ。

SNS上には「まだうちには届かないが、あと少しの辛抱だ」などの声もあり、状況は改善されている。

だが、「根本的な問題が改善されなければ、また同じ状況に陥るのでは?」「ロックダウンは一体いつまで続くのだ?」といった不安の声も挙がっており、予断は許さない。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「日本のなかの中国」「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミア)、「中国人のお金の使い道」(PHP新書)、「中国人は見ている。」「日本の『中国人』社会」「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国を取材。

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