年金のみの老後生活をしている世帯のお財布事情を探る
年金+貯蓄の切り崩しによる収入実態
最近では定年退職後も再就職をするケースも増えてきたが、多くの人は退職後、退職金やそれまでの貯蓄に加え、支給される年金に頼る生活に入ることになる。就業による収益が収入のメインとなる一般労働者世帯とは大きな違いがあることが予想されるだけに、興味は尽きるところを知らない。そこで総務省統計局における家計調査の公開値から、「単身無職」「夫婦のみの無職」の世帯に関して、そのお財布事情の確認をしていくことにする。
次に示すのは2014年における平均的な「60歳以上の単身無職世帯(元々独身、あるいは相方に先立たれたか離別して一人暮らしをしている60歳以上の無職の人)」「高齢夫婦無職世帯(夫は65歳以上、妻は60歳以上でその世帯には2人きり・無職。子供などは同居をしていない)」それぞれのパターンにおける家計収支のうち、収入面を示したもの。無職が前提なので嘱託などで再就職している人は該当しない。
単身世帯は年金が約10万3800円。それに加えて毎月1万円足らずの「その他収入」(「無職」が前提なので、利息なり証券の配当などと考えられる。あるいは不動産収入も平均化された上で加算されているはず。ただし「仕送り」や「資産収入」を収入としている人は少数)。あわせて約11万円が実質的な収入。しかし非消費支出(税金・社会保険料など)と消費支出 (世帯を維持していくために必要な支出)は合わせて15万3723円のため、足りない4万1516円をねん出する必要がある。基本的にはグラフの説明の通り、これまで貯めてきた貯蓄からの切り崩しで充当される。これが年間で約50万円の金額。
同様に高齢夫婦無職世帯の場合は、年金が約19万円強、その他の収入が約1万6500円。貯蓄の切り崩しが6万円強で合わせて26万8907円が、月あたりの入金合計額となる。注意すべきなのは、どちらのパターンの世帯でも、収入全体に対して毎月2割強の貯蓄切り崩しをしている点。
支出状況はどうだろうか
高齢者の単身無職世帯と夫婦世帯の支出の内訳は次の通り。非消費支出(税金や社会保障費)などが別途発生している事に注意。絶対金額では無く、消費支出内の比率の比較であり、そのまま並べるのはやや無理がある。しかしながら生活様式の差異を推し量るには十分な精度。
「二人分が必要な項目(食料、保健医療)は単身世帯より夫婦世帯の方が比率が上」「二人である程度共用できる項目(住居、光熱・水道など)は単身世帯より夫婦世帯の方が比率が下」との結果が出ている。そのまま約2倍(一人か、二人かの違い)の比率では無いのは、総額が違うからに他ならない。
これらの違いから、少なくとも金銭面では、夫婦世帯の方が余裕のある生活ができているように見える。特に住居費の違いは大きい。高齢者関係の論説を読み説く際、そしてライフプランの構築の時に、この事実を覚えておいて損はあるまい。
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