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岡山の夜空に名工の花火が輝いた!「岡山国際サーキット花火大会」(2024年7月20日開催)レポート

やた香歩里花火鑑賞士な旅ライター

2024年7月20日、岡山県美作市の岡山国際サーキットにて、花火大会が開催されました。愛知県の磯谷煙火店がプロデュースするというのも話題のこちらの花火大会、2023年の開催が好評だったこともあり、足を運んでみました。その様子をレポートします!

「岡山国際サーキット花火大会 produced by 磯谷煙火店」とは?

岡山県東部、兵庫県と県境を接する美作市の「岡山国際サーキット」で開催される花火大会。2023年に続き、2024年も愛知県の磯谷煙火店プロデュース&打ち上げにより開催されました。

磯谷煙火店とは?

愛知県岡崎市の花火会社で、創業明治20年という老舗です。花火競技大会最高峰の賞である内閣総理大臣賞を2度受賞。現代表取締役の磯谷尚孝氏は2022年に厚生労働省の指定する「現代の名工」に選出、2024年には黄綬褒章も受章されています。

その花火は決して奇をてらっているわけではないのに、写真で見ても磯谷煙火店の花火とすぐに判別できるほど、整った美しい形と、クリアな発色が特徴です。

花火大会で打上担当煙火店をアピールするところはあっても、煙火店の名前をタイトルにつけるのは実はかなりレア。磯谷煙火店の名称が入った花火大会はほかに「ISOGAI花火劇場in名古屋港」があります。磯谷煙火店の人気や知名度、そして花火をよく知る人ならその内容や質がおおむね想像できるという信頼度の高さの表れでしょう。

真ん中の七色の花火は、個人的に特に磯谷煙火店らしさを感じる花火です。
真ん中の七色の花火は、個人的に特に磯谷煙火店らしさを感じる花火です。

岡山国際サーキットへのアクセスは?

自家用車なら最寄りICから20~30分程度ですが、公共交通機関で行くのはちょっと厳しいところです。今回の花火大会では岡山駅と倉敷駅から日帰りライナーバスが運行されていたほか、旅行会社のバスツアーも運行されていました。
関東から向かった私は当然日帰りはできないので、岡山駅近くの宿に宿泊し、花火大会には岡山駅前発着の日帰りライナーバスで向かいました。

いざ、ライナーバスで岡山国際サーキットへ!

そして当日。いよいよ岡山駅前からライナーバスに乗り、会場に向かいます。バスは定刻の15:30に出発。1時間半ほどかかって17時ごろに岡山国際サーキットに到着しました。
開始までまだ時間はありましたが、とりいそぎ入場して観覧席へ向かいました。

観覧席はいくつか種類があり、有料指定席はパドック内。写真の建物の向こうにあります。花火打上場所はそのさらに向こう。
左手前はスタンド席になっており、こちらは自由席(有料)になっていました。

レーシングコース外側の出店&フードエリアではたくさんの出店が並ぶほか、ステージもあり、イベントで賑わっていました。13時開場で、イベントは14時ごろから行われていたようなので、渋滞を避けて早めに入場しても楽しめたのではないかと思います。

有料指定席側はイス席やペアシート、テーブル席など、様々なタイプの席がありました。花火が上がるのは写真左手。

私はフォトグラファーエリアチケットを購入していたので、とりあえず撮影場所を確保。準備もあるのであまり時間に余裕がなくイベントなどは見に行けませんでしたが、18時からはレーシングコースでドリフトアトラクションが!

こういうのはサーキット場ならではですね。普段あまり見る機会のない方も多いのではないでしょうか。パドック内の指定席からも続々と人が出てきて、ショーを楽しんでいました。

いよいよ花火大会が始まる!

すっかり日が落ちた19:45、いよいよ打ち上げ開始です!

HANABIナビゲーターのお二人、人気声優の神尾晋一郎さんと榊原優希さんが登場し、開催を盛り上げてくれました。私はあまり声優さんに詳しくないので知らなかったのですが、榊原優希さんは岡山出身なんですね。

お二人とも、声優さんだけにとても聞き取りやすかったことはもちろん、花火の魅力や、見た後の感動の伝え方もとてもわかりやすく、プログラムを見た後の感想も
「戦っている感じが…」とか
「寄り添うように上がる花火が後ろから抱きしめているようで…」とか
花火の見方を観客にさりげなく伝えてくれるようなMCぶりで、とても良かったです。

さあ、サーキット場にふさわしく、F1のテーマ曲「TRUTH」にて花火がスタートしました!

バチバチバチッ!という音の鳴る花火や、ジュワッと音を立てて開く霞草という花火が多用され、サーキットを走る車の爆騒音にも聞こえました。

今年は映画音楽と花火のシンクロ

プログラムは音楽とともに上がるスターマイン(速射連発花火:たくさんの花火を連続して打上げる方式)がメイン。磯谷煙火店の「メロディー花火(R)」は高度な音楽と花火のシンクロが特徴です。

2023年開催時はクラシック音楽がテーマだったそうですが、今回は映画音楽がメインということで、使われた音楽は「ロッキーのテーマ」「アンチェインド・メロディ」(『ゴースト‐ニューヨークの幻』より)、「Dancing Queen」(『マンマ・ミーア』より)などなど、よく知られた曲でした

「Dancing Queen」のラストに向けてどんどん華やかに!
「Dancing Queen」のラストに向けてどんどん華やかに!

きっと使われるのではないかと思っていた『グレイテスト・ショーマン』からは「This Is Me」が。この曲、花火大会でよく使われるんですが、曲の盛り上がりが感動的なんですよね。

これぞ磯谷煙火店!というようなカラフルな花火の連続!
これぞ磯谷煙火店!というようなカラフルな花火の連続!

音楽と同調してバシッと花火が開くのが爽快!

若干煙が残りやすいコンディションながら、花火の色鮮やかさは失われていません。
若干煙が残りやすいコンディションながら、花火の色鮮やかさは失われていません。

全体的に、使用曲は映画音楽のなかでも定番といえそうな、幅広い年代の人の耳に馴染んでいるであろうという曲でした。ファミリー層も多かったので、お子さんをターゲットにした曲がもう少しあっても喜ばれたかも?

磯谷煙火店の名作が次々に

「メロディー花火(R)」以外にも、様々な花火玉をじっくり見せるコーナー(4号玉・5号玉で構成された「花火図鑑」や、1発ずつ打ち上げられる花火の音楽との調和を楽しむ「ハーモニー花火」、型物花火を中心とした「イラスト花火」、5号~10号玉の「大玉連発」など)もあり、磯谷煙火店の多彩な花火をじっくり楽しめました。

「大玉連発」で上がった花火
「大玉連発」で上がった花火

音にあわせ1発ずつ上げる「ハーモニー花火」。4発同時に撮っていますが、打ち上げは1発づつ行われています。
音にあわせ1発ずつ上げる「ハーモニー花火」。4発同時に撮っていますが、打ち上げは1発づつ行われています。

写真でみても「あ、これは磯谷さんの」とわかる、代表作といえる花火がたくさんあるのも磯谷煙火店の特徴ですが、その魅力を余すところなく打ち上げた印象です。

「イラスト花火」では、物の形を描くいわゆる「型物花火」が上がり、ハートや星などのシンプルなものから、トナカイやワイングラス、ダイヤの指輪など、「これなんだ?」とあてっこするのも楽しそうな花火も上がりました。

左上:ハート、右上:トナカイ、左下:ワイングラス、右下:土星
左上:ハート、右上:トナカイ、左下:ワイングラス、右下:土星

「ボレロ」に合わせ大玉を打ち上げる大玉連発では、ゆったりしたメロディに乗せての単発打ちから、終盤は対打ち(2発を同時に打ち上げる)に。曲の盛り上がりに合わせて高揚感も抜群!

MCの最初に、「首が痛くなるほど真上に上がる」という説明がありましたが、確かに見上げっぱなしで、終盤にはすっかり首が痛くなっていました。

フィナーレは「スターウォーズメドレー」でダイナミックに!

あっという間の1時間の終わりは、壮大な「スターウォーズメドレー」でのフィナーレ。これも文句なく、年代を問わず多くの人に親しまれている楽曲ですね。

序盤はテーマ曲にあわせ雄大に始まり、続く不穏な曲調の「帝国のマーチ(ダースベイダーのテーマ)」、優雅な旋律の「レイア姫のテーマ」へと続き、変化する曲調に合わせ花火も打ち上げテンポも変わります。

優雅に清らかに咲く「睡蓮の花」はレイア姫のイメージ? ちなみに右下の光は月。
優雅に清らかに咲く「睡蓮の花」はレイア姫のイメージ? ちなみに右下の光は月。

そして、ここぞというときに開く磯谷煙火店の名玉。

磯谷煙火店の代表作「光の宝石」が視界を埋める!

花火が花火に重なる怒涛のエンディング!

最後は眩しいほどの光がはじけて…

花火大会は幕を閉じました。
最後に客席では、思わず上がった感嘆の声と拍手が響きました。

サーキットやスタジアムの花火の魅力って?

近年、サーキットやスタジアム、競馬場などで開催される花火大会が増えてきています。

サーキットでいえば、栃木県茂木町の「モビリティリゾートもてぎ」は毎年夏と冬に花火大会を開催していますし、大分県日田市の「オートポリス」では「天空de HANABI」を定期的に開催しています。静岡県の「富士山花火」は2022年より「富士スピードウェイ」で開催されるようになりました。

反面、地域で長く続いてきた花火大会が終了してしまったり、コロナ禍で中止になって以来、再開されない花火大会があったり。花火大会の規模が大きくなるとともに周辺地域にかかる負荷が増えることや、費用が高騰するなど様々な事情が、花火大会の開催を難しくしています。

その点、サーキットやスタジアムであれば、もともと大きな音を出しても問題のない周辺環境であったり、多数の集客を見越した駐車場や音響設備、客席やトイレなどの各設備が充実していたりで、実は花火大会を実施するのに好適な条件が揃っています。仮設ではないトイレがたくさんあるのは地味に嬉しいポイント。

各会場の形状や個性を活かしていたり、関連する多彩なイベントを開催したりと盛りだくさんなことも多いです。

今後、こういった施設での花火大会はさらに増えていくのではないでしょうか。

サーキットの場合は、その施設の性質上、基本的に公共交通機関の乏しいところにあるので、自家用車でなければ行きにくいところが難点でしょうか。

「岡山国際サーキット花火大会」では、多数のライナーバスやバスツアーを出すことで対応していましたが、そのあたりの「行きにくさ」と「それでも行きたい」と思わせる魅力のバランス、リピートする楽しみをどう出していくかが、こういった会場での開催のポイントかもしれません。

花火大会は東西で大きく違う

花火大会は、東海の愛知・岐阜・三重あたりを境に、東側で非常に盛んで、西側で開催が少ないという明瞭な違いがあります。

これは、関東平野や、大規模河川の広大な河川敷を多く有する東日本の地形が花火大会に好適であることや、江戸時代から東海以東で発達してきた文化的な側面があるのだと思います。

昔から花火大会が根付いていない地域では、このご時世で規模拡大や新規開催することは難しいでしょう。そういうなか、新たな花火大会を根付かせるには、既存の施設を活用した花火大会はとても重要です。

西日本にも素晴らしい花火を上げる煙火店はたくさんあるのですが、競技会での評価が高かったり、人気や知名度が高かったりするのはやはり東日本の煙火店が多いです。そういった、地元以外の煙火店の花火が楽しめるというのも、「岡山国際サーキット花火大会」のポイントだったと思います。

花火の感動はもちろん、花火大会としての可能性をたくさん感じさせてくれた「岡山国際サーキット花火大会」、今後も長く開催が続くことを期待します!

岡山国際サーキット花火大会2024公式サイト:今回の開催概要や会場図などをご覧いただけます。

岡山国際サーキット公式サイト:アクセスなどのご参考に。

磯谷煙火店公式サイト:会社概要や手掛けている花火大会の情報、美しい花火の写真も楽しめます。

花火鑑賞士な旅ライター

宮崎生まれの大阪育ち。人生の約半分を京都で過ごし、現在は千葉在住。もとからの旅好きが、関東移住を機に花火にはまり、旅の目的に花火鑑賞が加わりました。遠くへの旅行も好きだけど、身近なお出かけも好き。どこかで見た素敵なものを、誰かに伝えたい。知って欲しい誰かと知りたい誰かを繋ぎたい。日本酒ナビゲーターで温泉ソムリエで花火鑑賞士な旅人。

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