基本は現金とクレジットカード…二人以上世帯の代金支払い方法の移り変わりをさぐる(2023年公開版)
少額は現金、金額が大きくなるとクレジットカードも
対価支払いには現金だけでなくクレジットカードや電子マネーなど、多彩な手段を用いることができる。二人以上世帯における、お金の決済手段の移り変わりと現状を、金融広報中央委員会の「知るぽると」が毎年実施している調査「家計の金融行動に関する世論調査」(※)の公開結果から確認する。
まずは直近2022年における、金額別主要決済手段。4つの選択肢のうち「主なもの2つ」を答えてもらっている。
二人以上世帯の場合、小口決済でも電子マネーなどが使われる状況は4割に満たない。大体が現金支払いで、金額が大きくなるに連れ、クレジットカードの率が高くなる。1000円を超えると現金以上の率にまで上昇する。
ここで、電子マネーの利用頻度の低さに首をかしげてしまいそうになる。スマートフォンの普及、対応店舗数の拡大に伴い、少額決済が便利な電子マネーはもっと普及しているはずではないか、と。
そこで質問用紙を確認すると、文言には「あなたのご家庭では、日常的支払い~」とある。つまり世帯構成員一人ひとりのプライベートでの支払いではなく「世帯全体の家計として」との認識で回答している可能性が高い。
クレジットカードを家族全体の買い物に使うことはあっても、基本的に個々の持ち物である(スマートフォンなどの携帯電話に組み込んでいる)電子マネーを「家庭全体向けの」買い物に使うことは多くない。電子マネーは「家計全体のお財布」ではなく、「世帯構成員一人ひとりのお小遣い・お財布」的な要素が強い(例えば本人に無断でおサイフケータイを使って、妹の漫画雑誌や家族全員の夕食の材料を買われたら、怒らないはずがない)。そのように考えれば、二人以上世帯で電子マネーの「日常的支払」比率がそれほど高くないのも納得できる(必然的に家庭(世帯)の支払い=個人の支払いとなる単身世帯では、電子マネーの利用頻度も高い結果が出ている)。
新型コロナなどで急激に増えるクレカや電子マネー利用率
二人以上世帯では現金とクレジットカードが主流で、電子マネーなどはあまり使われない。これが基本となるが、時代の流れとともに少しずつ変化も見受けられる。
グラフには直近分を含め過去12年間の値を反映させたが、12年の間で現金の値は各金額領域で漸減し、クレジットカードや電子マネーの利用が少しずつ増加していたのが分かる。電子マネーは2011年以降急増しており(調査結果の数字的にはグラフの領域外だが2010年から増加している)、「おサイフケータイ」普及が大きなトリガーとなったことは容易に想像できる。また、その時期においてもクレジットカードの少額決済での利用頻度は落ちておらず(むしろ増加中)、現金の率が1000円超の金額では減少していることから、「おサイフケータイなどの電子マネーが現金の代わりに(少しずつながらも)使われ始めた」と考えれば道理は通る。
また電子マネーの動向を詳しく見ると、5000円以下ではますます利用率が高まるのに対し、それを超えると利用率の上昇度合いは半ば足踏み状態だった。少額決済の便利ツールとしての認識が強まり、クレジットカードとの使い分けが進んでいるようだ。
他方2020年以降では現金の値が大幅に減り、クレジットカードと電子マネー・デビットカードが大きく増えている。イレギュラーにすら見えるこの動きは、消費税率引き上げによる景況感下落への対策として2019年10月1日から2020年6月30日まで実施されたキャッシュレス・ポイント還元事業と、2020年春から確認された新型コロナウイルスの流行(で現金による接触型支払いが避けられたこと)によるものと思われる。たまたま偶然ではあるが、この2要素が同時に影響することで、ここまで大きな変化が生じたのだろう。
特に2021年におけるクレジットカードと電子マネー・デビットカードの増加ぶりは、目を見張るものがある。ただし2021年については、二人以上世帯で調査方法がこれまでの訪問・郵送の複合・選択式から、インターネットモニター調査法に変わったため、その変更が影響している可能性は否定できない。
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※家計の金融行動に関する世論調査
直近分となる2022年分は世帯主が20歳以上80歳未満の世帯に対しインターネットモニター調査法で、2022年6月24日から7月6日にかけて行われたもので、対象世帯数は単身世帯が2500世帯、二人以上世帯が5000世帯。過去の調査も同様の方式で行われているが、二人以上世帯では2019年分以前の調査は訪問と郵送の複合・選択式、2020年では郵送調査式だった。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。