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丸見えです、あなたのプライバシー; 私たちにも出来る個人情報保護対策

森井昌克神戸大学 名誉教授
個人情報漏えい

先般、大量の情報漏洩事件が起こり、大きな話題になりました。話題になった理由は、数千万件というその漏洩量もありますが、乳幼児から小学生、中学生に至る青少年を中心に、その家族の情報が漏洩した事でした。漏洩を起こした犯人は一人であり、しかも社外の人とはいえ、委託を受けた会社のエンジニアという内部犯行であることも注目されました。情報漏洩が起こる原因の第一は故意の有無に関わらず、内部の人の行為によるものです。今回の犯人は自らの私欲に基づいた故意の漏洩であり、個人情報を管理する身でありながら、自分のスマートフォンに個人情報をコピーして、いわゆる名簿屋と呼ばれる個人情報等の売買を行っている会社に売りつけたのでした。

個人情報はいたるところで漏れています。先のような大量の情報が漏れる事は希ですが、毎日のように数千件単位の個人情報が漏れる事件が起きていると言っても過言ではありません。漏れる原因は数多く有るのです。先の事件のように営利目的の犯罪行為の他に、個人情報が記録されたパソコンやUSBやSDメモリカードと言った記憶媒体の紛失および盗難、それに外部からのネットワーク経由での不正アクセスによる情報窃盗です。

個人情報が重要視されるようになった現在、個人情報を扱う会社や組織では、それを堅固に守る対策がとられるようになりました。個人情報に直接触れることのできる技術者には教育とともに、その過失には重い罰則規定が設けられることが通例となり、システム(データを扱う装置)も容易にコピーできない仕組みを取り入れるようになっています。さらに個人情報保護法という個人情報を扱う上での厳しい法規制もあります。

それでも個人情報が漏れる可能性があるのです。冒頭の情報漏洩を起こした会社の例も、関係会社社員の犯行であるとはいえ、必ずしも会社側に大きな失態があったわけではなく、どこの企業、組織でも十分あり得ることなのです。個人情報はその個人が保有する情報であり、その利用を許可した企業、組織のみが扱えるという本来の意味から、すべての個人情報をその個人がコントロール、つまり削除や細かな利用方法を指示することが必要です。しかし現実には不可能です。

では、個人情報の漏洩対策として私たちに出来る対策はあるのでしょうか。それはただ一つ、個人情報を出さない、登録しないことです。正確には必要以上に個人情報を他者に漏らさない事です。軽い気持ちで、懸賞に応募したり、ちょっとしたプレゼントにつられてアンケートに応募したりすることはできるだけ控えるようにすべきです。さらに個人情報漏洩について神経質にならないことも重要です。クレジットカードの番号や銀行口座番号、さらにはネットサービスでのパスワードが漏れれば直接被害に遭う可能性もありますが、一般的な個人情報である、氏名や年齢、住所が漏れたところで、直接大きな被害に遭う事はありません。

神戸大学 名誉教授

1989年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程通信工学専攻修了、工学博士。同年、京都工繊大助手、愛媛大助教授を経て、1995年徳島大工学部教授、2005年神戸大学大学院工学研究科教授(~2024年)。近畿大学情報学研究所サイバーセキュリティ部門部門長、客員教授。情報セキュリティ大学院大学客員教授。情報通信工学、特にサイバーセキュリティ、情報理論、暗号理論等の研究、教育に従事。内閣府等各種政府系委員会の座長、委員を歴任。2018年情報化促進貢献個人表彰経済産業大臣賞受賞。 2019年総務省情報通信功績賞受賞。2020年情報セキュリティ文化賞受賞。2024年総務大臣表彰。電子情報通信学会フェロー。

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