若手ばかり採用をするとどんなことが起こるか〜「非若手」を活かす組織力も重要に〜
■若手の人手不足はもう確定的事実
世はまさに少子高齢化時代。これは「すでに起こった未来」で、今後長年にわたって社会の方向に影響を与えていく大きな要因です。一時的に、コロナなどによる不景気で「買い手市場」になってはいますが、今後20年「若手の人手不足」になるのは必然です。当然ながら会社も、この波を受けずにいられるわけもありません。労働人口の平均年齢はどんどん上がっていくことでしょう。
ところが多くの会社は「できるだけ若い人を採りたい」とばかり言います。私のクライアントも、やはり多くは本音では20代から35歳ぐらいの「若手」を採りたいと考えています。また同時に、年を取っていく人は徐々に去って欲しいと考えてさえいたりします。
さて、そういう考えのままずっといくことは、果たして「職場の働きやすさ」にどのような影響を与えるのでしょうか。
■若手採用は「レッドオーシャン」。人材レベルが下がるおそれも
まずは入口の問題。少子化なのに皆が「若手、若手」と採用のターゲットを若手ばかりに向けることで、必然的に若手マーケットは「レッドオーシャン」(競争の激しい「血の海」)市場になり、採用における費用対効果は悪くなる可能性があります。
どんどんお金やマンパワーを注ぎ込んでもなかなか採れない、採れても「若手」ではあるもののレベルが高くない人を採用せざるをえない、ということになりかねません。
あくまで若手採用にこだわるなら、それ相応のコストをかけるか、若手市場の中で比較的ブルーオーシャン(非競争的)な「地方」「女性」「既卒」「未経験者」などを攻めるしかありません。それもせずに若手にこだわるのであれば、職場の人材レベルはどんどん下がっていくかもしれません。
次に出口の問題です。若手があふれる会社にするには、一定以上の年齢となった人に何らかの方法で退出を促さなくてはなりません。退職金の増額や役職定年などがポピュラーですが、もっとストレートに退職勧奨を行ったり、露骨な左遷的人事を行ったりするような会社もあります。
追い出される当人にとっては、もちろん嫌なことでしょう。会社側もそう思われても致し方ないと思っていても、損得計算上プラスだからと行っているわけですが、そういう会社の「追い出し行為」を見ている若手の視線を計算に入れていない場合が多々あります。
■結局「若手」も年をとる。「一気に皆辞める」ことも想定すべき
若手は上が追い出されることで、昇進やいい仕事が回ってくる可能性が高まるため、プラスに感じることも多いですが、裏腹に「いつかは自分もああなるのか」とも考えます。最終的にひどい目に合わされるかもしれない会社に、完全にコミットできるでしょうか。
人材の新陳代謝を高めながら、このような状態にしないようにするのは大変難しいことです。私の出身のリクルートは昔から若手中心の新陳代謝の高い会社ですが、かなりの工夫をしてその風土を保っています。
若手にこだわる会社がよく陥る罠が「似たような年齢の人ばかり採ってしまう」ことです。特に成長中のベンチャー企業等に多いのですが、いくら若手がいいからといって、脂の乗り切った30前後の活きのいい人たちばかりを採用すると、人口ピラミッドが特定の年齢に偏ります。
短期間ではあまりわからないのですが、当然ながら彼らも年を一斉に取っていくので、平均年齢が30から35、35から40とどんどん増えていくわけです。
異なる年齢の人を万遍なくとっていけば、平均年齢は上昇してもピラミッドの形は理想の「三角形」を保ちやすいのですが、同年齢となると最初は「+」型、そのうち「十字架」型となり、最後は「T」字型になって、どんどん「頭が重い」組織になりかねません。
同じ年齢の人は同じライフステージを経ることも多いために、新陳代謝を促す社外退出の施策を取ったら取ったで「一気に皆辞める」ということも起こってしまうかもしれず、なかなか対処が取りづらくなります。
■「非若手」の中から自社に合う人を見つけ出すことも大事
このように「若手」という特定の年齢にこだわることは、いろいろな問題を引き起こします。本当に欲しくて相当のコストを払うなら別ですが、いつまでも高度成長期やベビーブーム時代であるかのような「若手、若手」という発想は切り替えるべきでしょう。
むしろ「非若手」の中から、いかに優秀な人、自社に合う人を見つけ出せるか、入社後にいかにモチベーションを保って頑張って能力を発揮してもらえるかという「組織力」「職場力」をつける競争に入っているように思います。
実は私の会社は30名程度の小さな会社ですが、私(現在44歳)が真ん中ちょっと上という幅広い年齢層の会社で、立ち上げ時から本稿のような考え方で組織運営をしています。
もちろんベテランやシニアを採ることの苦労もあるのですが、若手ばかりにむやみにこだわらないことの方が、これからの社会においては最終的には強い組織、働きやすい職場を作るのではないかと考えています。
※キャリコネニュースから転載・改訂