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2年連続日本一に輝いた吉井理人投手コーチから学ぶべきこと

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
4年ぶりにファイターズに復帰しチーム防御率をリーグ1位に押し上げた吉井コーチ

日本ハムが10年ぶりに日本一の座に輝いた。

チームにとっては久々の栄冠だが、4年ぶりにファイターズに復帰した吉井理人投手コーチは昨年もソフトバンクで日本一を経験しており、2年連続で頂点に上り詰めている。

果たして偶然なのだろうか?決してそんなことはない。優勝請負人として吉井コーチが投手陣に与えた影響力は相当なものだと考えている。

彼の功績を最も端的に顕しているのがリリーフ防御率だ。昨年のファイターズはリリーフ防御率が3.19でリーグ3位だったの対し、今シーズンは2.67で1位に躍り出ている。

一方吉井コーチが昨年所属していたホークスは、昨年が2.83で同1位だったが、今シーズンは2.98でファイターズに抜かれ2位に甘んじている。両チームともに多少の選手の入れ替えがあるとはいえ主力の顔触れに大幅な変更がないだけに、これだけの推移が表れているのはやはり吉井コーチが原因と考えても、決して的を外していないはずだ。

日本のプロ野球も今やメジャーと変わらず投手の分業制が明確になってきている。20年ほど前のように「先発投手は完投するのが当たり前」という時代ではなくなった。

現代野球で安定した成績を残すには、シーズンを通して如何に中継ぎ陣のコンディションを整え、安定したパフォーマンスができる状態にするかが重要なカギを握っている。前述のデータ比を見れば歴然なように、吉井コーチは確固たるビジョンの上で中継ぎ投手たちを引率しているのだ。

1つ例を示したい。今年9月に一時帰国した際、ほっともっとフィールドで行われたオリックス対日本ハ戦を2日連続で観戦した時のことだ。同球場は日本では珍しく、ブルペンが観客席から見学できる場所に設置されている。ちなみにメジャーでは全30球場でファンがブルペンをチェックできる設計になっており、長年メジャーで取材をしてきた身として、メジャー流の中継ぎ投手の起用法や準備の仕方は十分に熟知している。

この2試合で確認できたのが、日本ハムとオリックスの中継ぎ投手の起用法に関する違いだった。一言でいって両極端だった。オリックスは2試合とも試合開始直後の1回から中継ぎ投手にブルペンで準備させている一方、日本ハムは先発投手の交代時期が近づくまで誰1人ブルペンで投球練習を始めるものはいなかった。もちろん自分が米国で慣れ親しんだものは日本ハムのやり方だ。

残念ながらこの2チーム以外で、どのような中継ぎ投手の起用法を採用しているのかは定かではない。だがオリックスのように常に中継ぎ投手を準備させていては実際に試合に登板しなくても、投手は否応なしに疲労を蓄積してしまう。長いシーズンで一定のパフォーマンスを保つのはまさに至難の業だ。

すでに権藤博監督(当時)が1998年にベイスターズを日本一に導いた際、中継ぎ投手もローテーションを組んで起用したことはあまりにも有名だ。まさに中継ぎ投手の中でもしっかりした分業制が必要だということだ。

休養中に大学院に通い投手育成や指導法について様々な観点から学ぶなど、従来の投手コーチとは一線を画す吉井コーチ。もう彼のノウハウが現代野球にマッチしているのは明白だ。今後はさらに彼のようなコーチが増えていくべきだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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